【勉強会レポート】AIは本当に人間にとって代わるのか?「人の言葉をAIが理解できたら、企業経営はどうかわるのか?」


自動車、医療、農業や畜産まで幅広いジャンルで導入が進むAI。第三次ブームとも言われる今、さらなるビジネス活用への機運が高まっている。
8月2日に開催された勉強会は、AI技術のなかでも特に注目される「自然言語処理技術」に焦点をあて、企業経営に与える効果と影響を考える試みだ。講師は、人工知能ビジネス・プロデューサーで、AIに関する講演も多いベルズシステム株式会社の小野寺隆氏。AIの未来図を現実的に描く勉強会の様子をレポートする。

目次:
1. ハイプサイクルから読み解くAIの歴史
2. 質問回答人工知能「ロアンナ」が社会を変える可能性
3. AI技術のビジネス活用への可能性
4. AIは宝の山。ベンチャーでも宝を掘り当てる可能性がある

ハイプサイクルから読み解くAIの歴史

ここ数年で社会に浸透してきたAIだが、実は真新しい技術ではない。今は第三次ブームを迎えているという。過去には第一次ブーム・第二次ブームがあったが、高すぎる期待に応えきれず、活用の機運がしぼんでしまった。
「“人工知能”という名称がよくないという意見もある」と小野寺氏。その名称がSF的なイメージをもたらし、「世の中を大きく変えてくれる」と過度な期待を生み、その期待に応えられず関心が失われて停滞する、というサイクルを繰り返しているらしい。これはハイプサイクルと呼ばれ、AIをはじめとする先進テクノロジーのほとんどが、このサイクルを経験すると言われている。

勝負はこれから。第三次AIブームの波にどう乗るか

小野寺氏は「AIをビジネスに活用するには、このハイプサイクルを理解しておく必要がある」と言う。第三次AIブームの波に上手く乗るには、ハイプサイクルのどの段階に位置しているかを知り、どのような投資をするのか、どの程度の投資をするのかを見極めることが大切なのである。
もちろん、AI=人工知能とはどういうものかを理解しておく必要もある。ここで、簡単ではあるが、AI技術の基本と現状について小野寺氏よりレクチャーがあった。
AIの基礎技術・応用技術はもちろん、それらを活用して実現するサービスをも人工知能と呼んでいるが、実は明確な定義はないらしい。画像認識、音声認識、データマイニング、自然言語処理と主に4つの分野があり、活用を目指して幅広い分野で実験が行われているもののビジネス化に至るのはごくわずかだそうだ。

質問回答人工知能「ロアンナ」が社会を変える可能性

今回の勉強会は、AI技術の4分野のうち自然言語処理のビジネス活用がテーマだ。小野寺氏が代表を務めるベルズシステムが開発した質問回答人工知能「ロアンナ」を実例として、その可能性を探っていく。
ロアンナはすでにメディアでも取り上げられ、その言語処理能力の高さに注目が集まっている。今までの人工知能と大きく違っているのは次の点だ。

・ 複数の言い回しや方言での質問を自分で聞き分けて認識できる
・ 多言語に対応しており、回答率9割を誇る
・ 回答できなかった質問は学習し、使えば使うほど賢くなる
・ 履歴の蓄積・集計・ランキングで解決状況を見える化できる

「完成当初はSiriでもできるじゃないかという反応で、なかなかスゴさを理解してもらえなかった」と小野寺氏。現在では実際に導入する企業も現れ、大手企業からの問い合わせも殺到しているそうだ。

ロアンナに欠かせない「自然言語処理技術」とは
ロアンナのコア技術は、自然言語解析、表記ゆれ調整、自己学習エンジンの3つ。これらを兼ね備えているからこそ、ロアンナは膨大な量の学習データを必要としない。
多様な言い回し、方言、日本語特有の表記ゆれ、同義語など難解な日本語を、搭載したコア技術で自動補正して理解するので、用意する学習データはシンプルに1問1答で済む。他のAIならこうはいかない。答えは1つなのに、言い回しの異なる何パターンもの質問を用意しなければならない。ロアンナなら学習データを準備する企業の負担が軽くなり、導入しやすい状況が生まれるというわけだ。
ただ、小野寺氏は「AIが勝手に学習してくれると思っているなら誤解だ」と言う。ロアンナも膨大な量の学習データは不要だが、人間による細かな教育が欠かせない。「AIの開発やビジネス化には自然言語処理技術の限界を知ることが大切」と小野寺氏。AIは前提がない質問には答えられない。つまり、自ら学んで自ら成長することはできないのである。AIの良き教育者として、まだまだ人間が必要ということだろう。

AI技術のビジネス活用への可能性

2017年11月にIDCより発表された予測では、AIビジネスの市場は2018年に約500億、2021年には3倍の約2500億になるとされている。これはAIの自然言語処理技術を使ったシステムに限った話だが、すさまじい伸び方に「今、企業がAIに投資をするのは間違いではない」という意見がつくほどだ。
小野寺氏も「問い合わせ対応のような定型反復業務の自動化を考えていかないと、企業の生産性は上がらない」と言う。AIは教えられた内容を着実に蓄積し、24時間365日働く。AIをビジネスに活用すれば、組織のナレッジを集積・共有することができ、業務時間にも余裕が生まれ、人間はより生産性の高い業務へシフトすることができる。
問い合わせ対応やパターン化された業務はAIの仕事、そんな時代はすぐそこに来ているかもしれない。

AI技術が日本の経営課題を解決する

生産性の問題以外にも、人口減少、超高齢化社会、日本人が減っていく中で増え続けるインバウンドなど、企業が対応すべき経営課題は山積みだが、AI技術はこれらの課題を解決できる可能性を秘めている。
一例として、AI東大合格プロジェクトで有名な新井紀子教授の著書を紹介する形で興味深い話が披露された。小野寺氏は講義中、「個人的には無理だと思う」と話していたが、誰もが1度は考える「AIは人間を超えるのか」という疑問に通ずる話である。
東大合格プロジェクトはすでに凍結されているが、新井教授はプロジェクトを進める中で、若者の読解力が著しく低下していることに気づいたという。試験問題の意味を理解せず回答しているAI“東ロボくん”に、テストの成績で負けている学生がかなりいることが分かったからだ。これは、人間の方に問題があるということになる。

AIに読解力で劣る若い世代が、10年後には顧客になり従業員になる。話が通じない顧客や従業員に、時間や教育コストをつぎ込むことは企業にはできないだろう。そうなると、現実的に人間に代わってAIの出番がやってくる。10年後を見据えれば、AI技術の活用は必然・必須となっていくに違いないのである。

AIは宝の山。ベンチャーでも宝を掘り当てる可能性がある
小野寺氏は「AIは宝探しのようなもの」だと言う。大企業だから、費用をかけたからといってお宝を掘り当てられるわけではない。“埋まっていそうな場所”を見つけるセンスが必要なのだそうだ。ゆえにベンチャーにもチャンスがあり、米中に周回遅れと言われる日本にも追い越すチャンスがある。AIの可能性はまだまだ広がっているのである。

ドコモ・イノベーションビレッジは、勉強会や意見交換会を行う「Villageコミュニティ」のほか、AIを含めた数々のテーマでベンチャー企業と協業を目指す「Villageアライアンス」という取り組みもある。AIの宝探しに挑戦するなら、仲間と環境を求めてドコモ・イノベーションビレッジを活用してみてはどうだろうか。