【勉強会レポート】目から鱗の地方創生~シェアエコ時代のローカル観光プロデュース術とは~

目次
1. これからの旅行業界を盛り上げるキーワード
2. 宮城県の南三陸町にある廃校ホテル『さんさん館』の魅力
3. 廃校ホテルに繋がる2つの事例
4. 廃校ホテルを成功に導く江藤氏のアイデア
5. Villageコミュニティへ行こう!

最近、廃校を活用したホテルが話題になっている。地方創生の起爆剤になるのか注目だ。そんなホットな話題に切り込んだ勉強会が開催された。
2017年5月18日、場所は赤坂のアーク森ビル31階にあるドコモ・ベンチャーズのラウンジ。ドコモ・イノベーションビレッジが主催する勉強会「目から鱗の地方創生~シェアエコ時代のローカル観光プロデュース術とは~」。参加費は無料。
ちなみに、ドコモ・イノベーションビレッジは、ベンチャー企業と協業を目指す『Villageアライアンス』、勉強会や意見交換会を行う『Villageコミュニティ』、社会問題の解決に取り組む人を応援する『Villageソーシャル・アントレプレナー』の3つを活動の柱にしている。

イベント冒頭、これまで世界60ヶ国を旅した経験を持つNTTドコモ 石原氏より「旅の価値は“ふれあい”にある為、そこに人さえいれば旅人が満足するコンテンツはつくれる」という話があった。それを踏まえて、有名スポットだけに頼らず、どのように地域で魅力的なコンテンツを作っていくかを実践的に学ぶ場として勉強会を企画したとのこと。今後、定期的に観光立国をテーマにした勉強会を開催する予定で、今回はその1回目だ。

講師を務めるのは、国内外各地の観光マーケティング事業に関わるトラベル・プロデューサの江藤誠晃氏。パネリストとして、鹿児島県鹿屋市にて廃校を地域共存型の活用施設として再生し運営する事業に取り組んでいる(株)ブルースタジオ 大地山氏、川崎の街の魅力を世界に発信する為に各種イベントを積極的に実施しているUDS(株) 吉岡氏も登壇した。

これからの旅行業界を盛り上げるキーワード

ドコモ・イノベーションビレッジ勉強会に登壇されたトラベルプロデューサー・BUZZPORT代表取締役社長 江藤誠晃 氏
旅行業界は、海外旅行・国内旅行・訪日観光の大きく3つに分けられる。海外旅行と国内旅行は日本人が主役。一方、訪日観光は外国人が日本国内を旅することを意味する。
江藤氏は、旅行業界を盛り上げることで地方創生につながると言う。ここで大切なことは、日本人による国内旅行だけではなく、訪日観光も盛り上げることだ。
江藤氏から観光業界を盛り上げるためのキーワードがいくつか示された。

共有経済
「これからの世の中は、共有経済(ソーシャル)が大切になる」と江藤氏。
車は買われなくなりシェアされるようになる。ホテルは、1人のオーナーによって運営されるのではなく、複数人がシェアした形で運営されるようになる。

関係人口
観光庁が発表した統計によると、国内旅行者が宿泊ありの旅行をすると1人当たり4万8千円を消費する。訪日観光客は1人当たり13万7千円を消費する。
定住人口1人当たりの年間消費額は124万円。つまり、国内旅行者約26人分、訪日観光客約10人分になる。地方の町から1人の人口が減少した場合、国内旅行者を26人集めるか、もしくは訪日外国人10人を集めれば、人口減少分を補える計算になる。人口を増やすのではなく、関係人口、すなわち旅行者を増やすことで同様の効果を狙うという発想だ。
そしてここから、江藤氏が注目するビジネス『廃校ホテル』についての話に入っていく。

宮城県の南三陸町にある廃校ホテル『さんさん館』の魅力

ドコモ・イノベーションビレッジ勉強会に登壇されたトラベルプロデューサー・BUZZPORT代表取締役社長 江藤誠晃 氏
江藤氏が実際に訪れた廃校ホテルが紹介された。
歴史は古く、1954年に開校し1999年に閉校された。卒業生は907人。2001年にホテルとして開業された。東日本大震災の際に大きな被害を受けずに残った。
ホテルの部屋は「3年2組」「6年1組」のように番号が振られている。レストランは給食室を改装した場所。食事は三陸の幸が食材に使われ美味しい。ホテル横にはプールもある。
働いているのは地元の人達。「毎日お客さんが来てくれるといいですね」という江藤氏の質問に「毎日は忙しいから嫌だよ」とスタッフのお婆さんが笑って答えてくれたそうだ。のどかな雰囲気が伝わってくる。
「この廃校ホテルに泊まってみたい人は手を挙げてください」という江藤氏の質問に、ほとんどの参加者が手を挙げた。
場所は遠く、クレジットカードも使えない廃校ホテル。人を惹きつける何かがあるようだ。

廃校ホテルに繋がる2つの事例

ドコモ・イノベーションビレッジ勉強会に登壇されたトラベルプロデューサー・BUZZPORT代表 江藤誠晃 氏、(株)ブルースタジオ 大地山氏、UDS(株) 吉岡氏

建築に詳しい大地山氏と、ホテル業界に詳しい吉岡氏も加わり、リノベーション施設についての話を聞くことができた。

ON THE MARKS
川崎にある吉岡氏が手掛けたリノベーション施設。訪日観光客をターゲットにしている。ホテルとホステルの中間に位置づけられる宿だ。
品川から8分、羽田から15分の立地。知らない人も多いが川崎は肉が美味しく、地ビールもある。音楽の町としても知られている。
「以前は健康診断するクリニックでした」と吉岡氏。アーティストが泊まり込みで2ヶ月くらいかけ、壁に絵を描くなどしてデザイン性を高めた。富士山の絵は圧巻だ。
「私以外はみんな英語を話せます」と吉岡氏。ホテルはバイリンガルスタッフを揃えている。

鹿児島県鹿屋市のプロジェクト
大地山氏が手掛けているプロジェクトは現在進行中。「小学校のキラキラした思い出をもう一度体験してもらう宿」というコンセプトで廃校ホテルの建設を進めている。場所は鹿児島県だ。
江藤氏は「学校の卒業生や地域住民がツーリストと関わることで人のつながりが生まれる。ツーリストも宿泊した後はその廃校の卒業生になる、というコンセプトが素晴らしい」と評価した。
鹿屋市には、日本で唯一の国立体育大学があるそうだ。それだけ気候もよく、運動部の合宿を誘致するなどのアイデアもあるそうだ。
会場では鹿屋市の街並みをドローンで撮影した動画が流された。きれいな海に囲まれた美しい風景に、廃校ホテルへの期待は高まる。

廃校ホテルを成功に導く江藤氏のアイデア

ドコモ・イノベーションビレッジ勉強会に登壇されたトラベルプロデューサー・BUZZPORT代表 江藤誠晃 氏、(株)ブルースタジオ 大地山氏、UDS(株) 吉岡氏
ディスカッションの最後に江藤氏から廃校ホテルを成功させるアイデアが示された。

アイデア① クラウドファンディングを活用する
廃校ホテルを作るには資金が必要。そのため、クラウドファンディングを活用する。
卒業生から資金を集めるのも1つのアイデア。仮に1000人の卒業生がいて1人1万円を出資してくれれば1000万円が集まる。卒業生1人当たり1口10万で株式化するのも面白い。
校舎を潰したくないと考える人からお金を集めれば億単位で資金が集まるかもしれない。
卒業生には、廃校ホテルのギャラリーを無料で使えるようにしたり、無料で泊まれるようにしたりするなど、特典をつけることで資金が集まりやすくなる。
『卒業生でない人でも、廃校ホテルに1度でも宿泊したら卒業生になれる』というコンセプトは面白い。そうすることで、廃校ホテルが単なる布団を提供する機能的な場所ではなく、コミュニティになる。

アイデア② コミュニティに仕掛ける
読書ファンにとって、本を読むだけに行く田舎があったら面白い。作家と田舎で朗読会できたら楽しいだろう。
オートバイのハーレーに乗る人達のクラブがある。彼らは大勢で泊まれて、オートバイも置ける施設を必要としている。廃校ホテルならそれが可能だ。校庭にハーレーが30台も並んだらフォトジェニックな写真が撮影され、SNSでシェアされるだろう。宿泊料金以外にバイクの駐車料もとれるのでビジネス的に面白い。

アイデア③ 学び舎としての学校
学校がだめになったからホテルを作るのではなく、ここは相も変わらず学校だと言う発想が大切。野外学習という発想を持ち、田んぼで農業体験をしたり、海で漁師体験をしたりできる。
実例として、ホタテを獲る体験ができる場所がある。漁師は、朝の仕事を終えてから40分~50分の間だけツーリストのために体験を手伝う。体験した人達は喜ぶし、隙間時間でお金を稼げるので漁師も喜ぶ。
海の幸や山の幸を採ったらピザ窯でピザを焼いたり、夜はキャンプファイアーで盛り上がったりと、自然を満喫できるイベント型の観光を楽しんでもらえそうだ。

廃校ホテルのプロモーション
江藤氏は「廃校ホテルに泊まりたい人を名簿にする。そうすると、去年は寒い時期に鹿児島に泊まった家族に対して、次回は暖かい時期に沖縄に泊まりませんかとプッシュできる」と、廃校ホテルのツーリスト名簿を共有することでプロモーション活動を行う新しいサービスを思い描いていた。
最後に江藤氏は「旅する人と迎え入れる人をつなぐビジネスをしたいと考えています」と締めくくった。
江藤氏による観光をテーマにした勉強会はこれからも続くそうだ。

Villageコミュニティへ行こう!

ドコモ・イノベーションビレッジ勉強会に登壇されたトラベルプロデューサー・BUZZPORT代表取締役社長 江藤誠晃 氏

ドコモ・イノベーションビレッジは、「Villageコミュニティ」という名で週2回火曜日、木曜日の19時~21時を中心に勉強会や意見交換会を行っている。
毎回、様々なビジネスの最先端のテーマで色々な人が講演者として登壇する楽しさがある。ぜひ1度、Villageコミュニティに参加してみてはいかがだろうか。
⇒ 今後の開催予定の勉強会はこちら(https://www.nttdocomo-v.com/div/calendar/