【勉強会レポート】最新事例から2019年の動向を探る「KaizenPlatformに学ぶ、デジタルマーケティング戦略の作り方」


「マス広告を大々的に展開すれば物やサービスが売れる」そんな時代は終わりを迎えつつある。今や、さまざまなデータを駆使して複雑化する顧客行動に対応するデジタルマーケティングは、あらゆる企業の成長戦略に必要不可欠だ。
数多くの企業のデジタルマーケティング戦略をサポートする、株式会社Kaizen Platform の須藤憲司氏を講師に迎え、EC・金融・サブスクリプションの3つの業種におけるデジタルマーケティングの最新事例を学び、2019年の動向を探っていく。

目次:
1. ビジネスモデルを分解すれば戦い方が見えてくる
2. デジタルマーケティングの施策を実際の事例に学ぶ
3. 業種・業界にかかわらず、ビジネスの悩みはみな同じ
4. 変化するネット戦場で勝ち抜く能力とは?

ビジネスモデルを分解すれば戦い方が見えてくる

須藤氏率いる株式会社Kaizen Platformは、これまで300社を超える企業のデジタルマーケティング戦略を手掛けてきた。多くの企業をサポートするなかで「業種が違っても、基本的なパターンは似ていることに気付いた」と須藤氏。ポイントは次の3点だ。

1. KPIとKGIはビジネスモデルに依存する
2. 業種をまたいでも同じKPIに効く施策は似ている
3. 戦略の論点と必要な体制の悩みも相似形

業種独自もしくは企業独自の特殊なオペレーションやルールがあったとしても、特殊なKPIやKGIは存在しない。つまり、業種・業界を問わず、企業が抱える課題や悩みは共通点がある。課題や悩みに共通点があれば設定するKPIも似てくるため、やるべき施策や効果のある施策も同じ、というわけだ。
だからこそ「他の業種・業界の事例が投資回収の精度を高めるうえで参考になる」と須藤氏は言う。今回の勉強会では、この3つのポイントに沿って今後の動向を探っていく。

EC・金融・サブスクリプションのビジネスモデルとは?
1つ目のポイント「KPIとKGIはビジネスモデルに依存する」について見ていく。まずは、EC・金融・サブスクリプションのビジネスモデルとKPI・KGIの確認からだ。

【EC】
商品詳細ページから商品をカートに入れて購入してもらい、その後はリピート利用で継続的な収益をあげる。新規顧客とリピーターをどれだけ増やせるかがポイント。
KPI:新規・リピート構造
KGI:流通総額最大化
【金融】
サイトで口座を開設して入金してもらい、ローンやFXといった金融商品を購入してもらう。開設後に入金される口座(アクティベート)を増やすこと、1口座の取引残高を増やす(クロスセル)ことがポイント。
KPI:新規・リピート構造
KGI:取引残高最大化
【サブスクリプション】
無料会員登録から、会費などが必要な有料会員へ切り替えてもらうことで収益をあげる。有料化(アップグレード)への転換率アップと解約阻止がポイント。
KPI:リテンション・アップセル構造
KGI:収益最大化

このようにビジネスモデルを分解してKPIを考えていくと、業種・業界による特殊性などないことが分かり、シンプルにやるべきことが浮き上がってくる。

デジタルマーケティングの施策を実際の事例に学ぶ

続いて、2つ目のポイント「業種をまたいでも同じKPIに効く施策は似ている」だ。インターネットビジネスの3つのフェーズ「アクイジション(獲得)」「エンゲージメント(顧客との接点)」「チャーン(解約や退会)」における、3業種のKPIに効果のある施策をチェックしていく。

フェーズごとに3業種のKPIを分類すると、アクイジション=新規顧客獲得/エンゲージメント=アクティベート、アップセル・アップグレード、クロスセル・クロスユース、リピート/チャーン=解約防止、となる。さらに、業種ごとに強化すべき点をまとめてみるとKPIの類似性に驚く。

【EC】
新規顧客獲得、リピート、アップセル・アップグレード、クロスセル・クロスユース
【金融】
新規顧客獲得、アクティベート、クロスセル・クロスユース、アップセル・アップグレード
【サブスクリプション】
新規顧客獲得、アップセル・アップグレード、アクティベート、解約防止

KPIから見えてくる「デジタルマーケティングでやるべきこと」
データを利用する施策は主に「全ユーザー向け」「セグメンテーション」「パーソナライズ」の3つに分類されるが、全ユーザー向けの施策はデータ不要で新規ユーザーに行うことも可能だ。そして、セグメンテーションには商品データ、パーソナライズはユーザーのデータがそれぞれ必要になる。このデータ施策の分類や整理したKPIを踏まえつつ、実際の事例を交えて具体的な施策がいくつか紹介された。

新規顧客獲得では、閲覧購入数の可視化で売上が3~5%アップした大手百貨店ECサイトや、入力フォーム上でダイナミックレコメンドを表示させ入力完了率を上げた損保会社。また、ログイン直後の画面に入金情報を表示して入金率を6%改善した証券会社や、マイページにおすすめの公演情報を表示して購買率を上げたチケット販売会社もある。そのほか、解約画面にユーザー好みのコンテンツを表示させ、約8%もの解約を防いだ動画配信サービスなど、身近なところで目にする施策が多い。
「KPIから考えるとシンプルにやるべきことが分かり、業種間で共通する施策が多いことに気付く。だから、他社で参考になる事例があればすぐに始めた方がいい」と須藤氏。まずやってみる、これがデジタルマーケティング戦略に大切なことなのかもしれない。

業種・業界にかかわらず、ビジネスの悩みはみな同じ

最後は3つ目のポイント「戦略の論点と必要な体制の悩みも相似形」だ。現在も多くの企業からデジタルマーケティング戦略について相談を受けている須藤氏。そのなかで、よく目にする3つの論点があるという。それは「ID戦略」「動画」「パーソナライズ×リアルタイム」の3つ。ここに2019年のデジタルマーケティング戦略のヒントがある。

2019年、デジタルマーケティング戦略はこう変わる
今後、デジタルマーケティングの中心になりそうな「ID戦略」「動画」「パーソナライズ×リアルタイム」。それぞれの動向について須藤氏は次のように解説した。

【ID戦略】
複数サービスを提供する企業の多くが抱える課題。サービスごとに会員DBが存在し、上手く活用できていない。これからのID戦略では、IDはあくまで一意のユーザーを識別するためのもので個人情報は重要ではない。1つのIDで複数サービスに接続できるようになれば、ユーザーの利便性はアップし、企業はデータ活用の幅が広がる。莫大なコストがかかる会員DBの統合はせず、内部で複数IDを一意のユーザーとして識別することで実効果を得る施策が始まっており、今後もこの流れは加速する。
【動画】
2021年には、動画がモバイルデータトラフィックの78%を占めると予測されている。モバイル向け動画は2秒以内にビジネスが決まるとされ、ファーストインプレッションが命。さらに、Facebookなどプラットフォームの多くが、常に新しいコンテンツを投入することを求めている。これまでは高コスト・ロングスパンで映像作品のような動画を作っていたが、これからは低コスト・短納期で量産し、高速でPDCAを回すことが重要になる。
【パーソナライズ×リアルタイム】
これからのパーソナライズに求められるのは「タイムトゥバリュー」の考え方。望むサービスを早く提供するほど好ましい結果が得られる。例えば、サービス提供に時間がかかりそうな場合「1週間以内に回答します」といったメッセージを出すなど、ユーザーごとに時間に着目した細かな対応が求められる。

変化するネット戦場で勝ち抜く能力とは?

インターネット上の戦場は日々刻刻と変化し、「今は局所で無数の一騎打ちが始まっている状態」と須藤氏。「VUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)」と呼ばれる不確実な時代となり、今までのPDCAではなく、新たに「OODA」が必要とも言われている。「OODA」とは、Observe(観察)、Orient(情勢への適応)、Decide(意思決定)、Act(行動)の頭文字を取ったもの。特に「Orient(情勢への適応)」がこれからの企業に求められる能力だという。この不確実な時代を勝ち抜くためにも、情勢をしっかり見極めて戦略を立てたいものである。

ドコモ・イノベーションビレッジは、勉強会や意見交換会を行う「Villageコミュニティ」のほか、スタートアップ企業との協業を創出する「Villageアライアンス」の取り組みを行っている。上手く活用して、新しい知識や仲間、そしてビジネスチャンスを見つけよう!