【勉強会レポート】メディアの勢力図が変わりつつある今、ライブ配信事業とインフルエンサーマーケティングの最新事情を学ぶ


テレビに取って代わり、ネットがメディアの主役の座を奪いつつある現在。そのなかでも、動画配信サービスは「スマホネイティブ」と呼ばれる若い世代に絶大な人気を誇り、Youtuberやインフルエンサーなど新たなタレントが次々と生まれている。
今回の勉強会では、ライブ配信や動画広告市場の現状にくわえ、インフルエンサーマーケティングやネットメディアの特徴を学ぶ。講師は、ライブ配信事業支援を行う株式会社ライバーエージェントの太田和弥氏と、インフルエンサーマーケティング事業を行う株式会社VAZ の森泰輝氏。最前線の事情を知る2人だ。

目次:
1.盛り上がるライブ配信。現状は今こうなっている
2.ライブ配信に関わる6つの変化とは?
3.ライブ配信から生まれる新しい才能
4.最前線を知る2人が語る、ライブ配信のあれこれ

盛り上がるライブ配信。現状は今こうなっている

太田氏はかつてLINE株式会社に在籍し、動画広告やライブ配信サービス「LINE LIVE」に携わっていた。その経験をもとに立ち上げた株式会社ライバーエージェントは、昨年12月にAKBの音楽ライブを独占配信するなど、スマホに特化したライブ配信事業の支援を行っている。

「本日のゴールはライブ配信に興味を持ってもらうこと」と太田氏。事業に直接関係なくともライブ配信について広く知識を得ることで、今後のビジネスアクションにつながるかもしれない。

【株式会社ライバーエージェント 太田和弥氏】

太田氏によると、大手企業やアーティストらによるライブ配信は盛り上がりを見せており、2018年末には大きなライブ配信が2つ行われたという。いずれも紅白後の時間帯に配信されたにもかかわらず、大きな成果を上げている。

1つは、Perfume(パフューム)がドコモと行ったライブ配信だ。同時視聴者数は約3万人、累計視聴者数は数百万人、少なく見積もっても数十万人という規模。
2つ目は、同じ時間帯に配信されたコカ・コーラのライブ配信で、LINE LIVEを使って行われた。渋谷でのカウントダウンと、Little Glee Monster(リトルグリーモンスター)のMVを交互に見せるという内容で、視聴者は何と295万人。23時半からたった30分の配信で視聴者数がここまで伸びるのは、太田氏でさえ驚きの数字らしい。
それだけ、ライブ配信が活況ということなのだろう。

ライブ配信に関わる6つの変化とは?

ライブ配信を取り巻く環境は日々変化しているが、その変化は大きく6つにまとめられる。6つの変化について、実例を交えながら聞くことができた。

【デバイスの変化】
MMD研究所のスマートフォン利用者実態調査によると、動画視聴時によく利用するデバイスは、PCが38.8%、スマホが76.5%で、その差はダブルスコア。動画を見るならスマホ、という時代がきているのだ。

【ネットワーク環境の変化】
実用化が近い5Gの通信速度は1秒あたり20GBで4G(100MB)の約200倍。場所を問わず超速でのダウンロード・アップロードが可能となり、屋外からのライブ配信も容易になる。料金体系や通信速度制限も変わることが予想され、若年世代がより自由に活用できるようになるだろう。

【プラットフォームの変化】
YouTube Live、LINE LIVE、Instagram、Twitter LIVE/Periscope(ペリスコープ)、Facebook LIVE、メルカリチャンネルなど、主要プラットフォームが次々とライブ配信に対応。
さらに、以前からあるニコニコ生放送、TwitCasting(ツイキャス)、SHOWROOM(ショールーム)や、海外発の17Live(イチナナライブ)やLive.me(ライブミー)などを含め、ライブ配信サービスが充実してきている。

【タレント/芸能界の変化】
個人でのライブ配信が可能となり、そこから新たなタレントも生まれている。実例として、本日の講師でもある森氏が代表を務める株式会社VAZ所属 のねおちゃんとゆなちゃんが紹介された。
2人ともライブ配信で人気が爆発し、ねおちゃんは現在、雑誌「Popteen」の専属モデルとして表紙を飾るなど活躍している。ゆなちゃんも「Popteen」のレギュラーモデルとして活躍中。テレビで人気を得て他のメディアに露出するというパターンではなく、ネットから2人のようなタレントが生まれる時代になっているのだ。

【表現/コンテンツの変化】
表現方法やコンテンツ制作も、スマホでのライブ配信に合わせて最適化されつつある。某テレビ局のライブ配信を実例として、次の3つのポイントが解説された。

①Smartphone Centralized -デバイス・プラットフォームへの最適化-
 スマホに特化して配信し、スマホでの見え方を考えて制作。
②Personalization/Communication -視聴者・発信者間の個性のやり取り-
 いかに視聴者とコミュニケーションを取るかがポイント。
③Story Making -視聴者がコンテンツと出会うストーリー-
視聴者が常に目の前にいるテレビと違い、“スマホで配信すること”を効率的・効果的に伝えることが重要。

スマホで見られることを意識した出演者の自撮り風配信(①)、出演者と視聴者のリアルタイムでのコミュニケーション(②)、事前にニュースリリースを発信したうえで、役作りのために出演者が髪を切るところを配信する(③)など、すでに実践されている状況がよく分かった。

【マネタイズスキームの変化】
例えば、LINE LIVEでは企業がライブ配信する場合、1回につき500~1000万円の費用がかかる。太田氏がLINEに在籍していた頃、公式アカウントを取得している企業は200万社ほどだったという。これらの企業が複数回ライブ配信を行うとすれば、そこに20~30億円程度の市場が生まれることになる。

動画広告市場の将来性とライブ配信のこれからのかたち
ライブ配信を含めたオンライン動画広告の市場は、2018年の約1500億円から2023年には約3000億円になると予想されている。これだけでも魅力的だが、さらに「ライブ配信から得られる収益にはもう1つある」と太田氏。

それは、個人配信による収益だ。視聴者は“投げ銭”と呼ばれるポイントを購入し、購入したポイントを自分のコメントを目立たせるために使う。人気のある発信者は投げ銭によって直接収益を得ることができ、LINEやSHOWROOM、17Liveなどが投げ銭の収益化に取り組んでいる。1時間の配信で150万円分の投げ銭を手にした発信者もいるそうだ。

eスポーツなどのゲーム配信やVtuber(ブイチューバー)など、今やさまざまな形で活用されるライブ配信。「今後も必ず伸びていく」と太田氏は断言していた。

ライブ配信から生まれる新しい才能

ライブ配信に関わる変化の1つとして「タレント/芸能界の変化」が挙げられていたが、その動向をよく知る森氏がここで登壇。森氏が代表を務める株式会社VAZは、YoutuberやTikTokerのプロダクションとして知られている。

【株式会社VAZ 森泰輝氏】

多くの人気Youtuberやインフルエンサーを支援してきた森氏は、「今後“ネットから生まれるタレント”という分野は右肩上がりに成長していく」と言う。ライブ配信を含めたさまざまなプラットフォームで人気を獲得し、ネットでの影響力を活用してテレビや雑誌といったマスメディアに進出するという流れが、芸能界の王道パターンになる日が近いのかもしれない。

最前線を知る2人が語る、ライブ配信のあれこれ

ここからは、太田氏・森氏に参加者も加わり、ライブ配信を中心としたテーマでディスカッションが行われた。

人気が出そうなクリエイターを見分けるコツ
「Youtuberやインフルエンサーを“よく分からない奴”と色眼鏡で見ないことが大切」と森氏。そして、YouTubeやTikTok、ライブ配信をとにかく見ることだそうだ。
毎日YouTubeしか見ない世代と、毎日テレビしか見ない世代では感覚が違う。だから、固定観念を捨てて多くのライブ配信を見る。これが「唯一かつシンプルなコツ」らしい。

Youtuberなどを企業プロモーションで効果的に使うには?
「宣伝色が出ると見てもらえない」と太田氏。結果を求めるなら、Youtuberやインフルエンサーの特色を活かすことが重要だ。そして、何よりもエンゲージメントの高いYoutuberやインフルエンサーを選ぶこと。森氏は「フォロワーやチャンネル登録数は見ない方がいい」と言う。Instagramなら『いいね』数、Twitterなら『いいね』数とリツイート数、YouTubeなら平均再生数が指標となるそうだ。

ライブ配信のこれからの課題
マーケティングデータが取りづらく、効果検証が難しいところが課題として挙げられていた。さらに、「若年層以外が見たい、聞きたいと思うコンテンツが少ない点も課題」と太田氏。視聴率の伸び悩みにつながるため、TwitterやFacebookはすでにオリジナルのコンテンツ作りを始めているそうだ。

今後、さまざまな課題やリスクを解決しながら、ますますライブ配信は進化していくのだろう。その可能性をあらためて感じた勉強会となった。

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