事業シナジーの創出(1) – シリコンバレースタートアップ連携

NTT DOCOMO VENTURES COLUMN

事業シナジーの創出(1) – シリコンバレースタートアップ連携

・社会課題解決に貢献するAIドローン- Skydio x NTTドコモ
・人員管理業務を効率化するプラットフォーム - Legion Techologies x NTTドコモ

NTTドコモ・ベンチャーズは世界の先端スタートアップに目を向け、米国・欧州・イスラエル・東南アジアと幅広い地域に投資を実施している。特に米国・シリコンバレーには現地拠点を設置し、スタートアップ界における最先端の場所から生まれる有望企業を発掘すると共に、協業開発に注力する。

社会課題解決に貢献するAIドローン

Skydioは、独自AIを採用した自律飛行ドローンを開発・販売するシリコンバレーのスタートアップ。NTTドコモ・ベンチャーズでは産業用途への可能性を感じて2020年7月に出資を行なった。

背景には、産業向けドローンの需要増加がある。農業、インフラ点検、空撮、物流などの分野では、省人化目的や人が赴くのが難しい現場への代替手段として注目されている。一方で、ドローンには操縦の難しさがあり、正確な飛行技術の習得には一定の期間と訓練が必要であり、そのことが普及を阻む要因ともなってきた。

Skydioのドローンはこうした課題を解決するものとして開発された。機体の上下に6台のカメラを備え、周囲の状況を把握しAIが判断して障害物を自動で回避する。GPS情報が取得できない環境下でも安定飛行ができるため、橋梁や屋内などこれまでのドローンが不得意としてきた場所での撮影を可能にしている。

NTTドコモ・ベンチャーズは、ドローンプラットフォーム「docomo sky」を展開するNTTドコモ(以下、ドコモ)のドローンビジネス推進室と共に連携を検討。シリコンバレー支店の原は当時ドコモ側に在籍し協業を検討。「日本には50年を超え老朽化した橋も多く、GPSの信号が届かない橋梁下の点検ニーズは非常に多かった。ただ橋梁の点検は高所作業が危険で専用重機を使用するとコストが高く、一方でドローンを使う場合は高度な操作技術が必要となる。Skydioはこうした課題を解決できる可能性を感じた」(原)

出資を契機に協業議論は進展し、出資後にはドコモが窓口となって同社のドローン「Skydio 2」の国内提供を開始、日本支社のSkydio Japanも設立し緊密な連携を行うなど関係性を深めている。

協業にあたっては、NTTドコモ・ベンチャーズが両者のブリッジとしてそれぞれのニーズと役割を明確化していくことで進んでいった。Skydioはインフラ点検の課題を持つ日本マーケットの開拓を視野に入れており、一方でドコモには日本での強固な事業基盤とdocomo skyというプラットフォームがある。Skydioがドローンを提供、docomo skyがデータ管理・解析を担うという補完関係のスキーム構築が行えた点、また出資時のNTTドコモ・ベンチャーズ担当者とSkydio側の信頼関係が構築されていたこともあり、国をまたいだ協業に際し両社の文化的障壁を乗り越えやすかった。

今後さらに日本でも拡大すると想定されるドローン市場において、NTTドコモ・ベンチャーズは先行事例を持つUSマーケットを見ながら先端の企業とのパートナーシップを仕掛けている。

人員管理業務を効率化するプラットフォーム

Legion Technologies(以下Legion)は、ワークフォース・マネージメントシステムと呼ばれる人員配置の最適化プラットフォームを提供する。

近年、働き方改革の名の下で多様な働き方が出現し、従業員の勤務管理や人員配置はますます複雑化している。例えばフレックスタイムや時短勤務などの勤務体系の違い、正社員・有期契約社員・アルバイト・副業など勤務形態の混在など、複雑な要素を考慮した管理が必要とされつつある。さらに新型コロナウイルスの影響でリモートワークや出勤人数の制限などの要素も加えた、よりフレキシブルな管理システムが求められている。

Legionのプラットフォームは、AIによりこうした課題を解決することを目的として開発された。例えば店舗での接客業であれば、過去の来店数や顧客対応数・販売数などの実績、混雑状況や天気などの各種データをAIが分析し、将来の対応人員数を予測。その予測データを元に、勤務形態、役職やスキル、勤務希望、人件費に関わる予算などの要素を鑑みながら最適化した勤務スケジュールを瞬時に作成する。

シリコンバレー支店の飯野は出資の理由を「昨今流行しているギグワーカーなどが良い例だが、米国では日本よりフレキシブルな働き方が数歩先に進んでいる。日本でも徐々に柔軟な働き方が浸透してきており、こうしたソリューションへのニーズが高まってくると考えた」と語る。

出資前にはNTTドコモ・ベンチャーズが主導しドコモショップの旗艦店にて実証実験を実施。副店長が7時間かけていたスタッフの勤務スケジュールのシフト作成作業がわずか1時間に削減。シフト作成は手作業であり、勤務時間の制限、各個人の希望、法律など複雑な要素を考慮する必要があり非常に時間がかかっていた。また属人化した“匠の技”であり特定の人しか対応できない点も課題であった。それが「AIによって可視化され、作業の効率化だけでなく、再現ができなくなるリスクを排除できる。コスト削減も含め、非常に有効性があることが証明された」(飯野)。

ただしLegionのゴールは単にシフト作成の省力化だけではなく、蓄積したデータを基に事業を最大化させること。例えば過去のデータから「どの人員の組み合わせが最も売上を伸ばしているか」といった分析を行うことが想定される。将来的に、人員配置という管理業務を「事業を成長させるためのインサイト発掘」という付加価値を作り出す業務に転化させることができる可能性がある。

Legionは、米国では大手コンビニエンスストアやディスカウントストア、ガソリンスタンドなどで採用されており、コロナ禍でも順調に業績を伸ばしている。LegionはNTTドコモ・ベンチャーズを「日本展開の戦略的パートナー」として、今後の協業を深めていく。出資を機に、さらなるパートナーシップを強めていく構えだ。

優れたスタートアップとNTTグループ内のアセットを掛け合わせることで、新しい価値が生まれる。NTTドコモ・ベンチャーズはスタートアップと寄り添いながら、NTTグループの“水先案内人”として、協業を仕掛けながら両者の間をつないでいく。