スタートアップ投資 - “少し先の未来”を見る先鞭投資

NTT DOCOMO VENTURES COLUMN

スタートアップ投資 - “少し先の未来”を見る先鞭投資

・産業領域におけるAI活用のトリガー - Senseye
・データ駆動型社会の基盤サービス - GeoSpock

NTTドコモ・ベンチャーズは事業会社と連動しながら投資や協業を進めていく一方、世界中の先端企業との関わりの中で“少し先の未来”において重要となるピースの発掘を独自に行っている。目の前で事業連携を行うには早い領域であったとしても、将来のNTTグループのビジネスにおいて重要となる領域であれば、いち早く有力なプレイヤーを見つけ、先行して出資を通じてパートナーづくりをしている。

技術やサービスの変化だけではなく、「どのような社会変化が訪れるか」から逆算し、その際に重要となる領域やプレイヤーに対して先行して投資を行っていく。

特に、テクノロジーを駆使した社会課題の解決、既存産業の革新、そして今後さらに本格化するデータ駆動型社会の実現に資する企業に対し先鞭的な投資を実施している。

産業領域におけるAI活用のトリガー

英国のスタートアップ・Senseyeは、製造業向けの自動予知保全ソリューションを提供する。製造業にとって、機器や設備の故障による製造ラインの停止は損失に直結する課題であり、故障の兆候を掴みメンテナンスを行うことは工場にとって生命線ともいえる。ただし多くの現場ではベテラン従業員のノウハウに頼ったアナログな点検手法が主流となっており、正確な予想や他の設備・工場で再現性をもつことは難しい。

近年はAI/IoT等を活用した予兆分析も徐々に広まりつつあるが、AIの学習には個々の機器・設備ごとの教師データの準備が必要となる。また導入コンサルティング等で多額のコスト等の要因もあり、一般的に普及する段階には至っていない。

こうした中で、Senseyeの「Senseye PdM」は、汎用的な学習モデルを実装することで機器の種類を問わずに予知保全を実現する。製造機械等の様々な稼働データを機械学習で分析、自動的に各機器に最適な機械学習モデルを生成し耐用年数や故障時間・時期の予測を実現する。若いスタートアップながら、これまでに産業機器メーカーや大手自動車会社など世界的大企業をはじめ数多くの導入実績を誇る。

現在Senseye は、故障予知や画像分析など製造業に向けたNTTドコモの一括分析ソリューション「FAAP」との連携を検討している。今後様々な機器がネットワークで接続され相互にデータを連携し合う“つながる工場”の普及、また5Gの本格展開が見込まれる中でより高度な情報の授受や高速通信によるデータの連携が一般化していく将来を想定した際、Senseyeのソリューションは重要なピースとなりうる。

予知保全という概念や製造業のデジタル化という考え方自体は以前から存在する。ただし、新しい技術や概念が実際に多くの企業で利用され産業の変化にインパクトを与えるには、普及の契機となる多くのユーザにとって使いやすいソリューションが必要であり、Senseyeにはこうした役割が期待されている。

データ駆動型社会の基盤サービス

GeoSpockはケンブリッジ大学出身の研究者が設立した、ビッグデータ分析のスペシャリスト集団。同社のプラットフォーム「GeoSpock DB」は、独自開発のアルゴリズムによって、2兆レコード以上の超大規模データを秒単位で高速分析することを可能にする。

近年、オンライン経済圏の拡大、IoT機器の普及、データ分析の浸透等の要因により、オンライン/オフラインの様々なデータが収集されるようになってきている。一方で、既存のデータ処理技術では大量のデータを処理するには時間やコストがかかりすぎてしまうため、実際に活用されているデータは集められたデータのごく一部である。

GeoSpock DBはこうしたデータ処理のボトルネック解消を意図して開発された超大容量データを高速処理する分析基盤である。AI開発やデータ分析にとってデータの量と質は有益なモデル構築において大きな影響を持っており、GeoSpockによりこれまではデータの活用が難しいとされてきた分野における活用が期待される。例えば街中のデータを大量に収集し分析するスマートシティ領域をはじめ、多くの関係者間の複雑な関係性を踏まえたデータを解析する必要があるロジスティクス分野、または広告やマーケティング領域など様々な分野への応用が想定されている。

既にGeoSpockは日本拠点を構えており、NTTグループとのPoCを随時進めていく予定である。NTTグループはICT事業をはじめ金融・不動産・エネルギーなど非常に幅広い分野のビジネスを手がけており、その多くにおいて今後データの活用は最重要課題となっている。GeoSpockの持つ高い汎用性は、今後訪れる本格的なデータ駆動型社会においてNTTグループとの親和性も高く様々な領域での連携が期待される。

事業会社から見た際に“飛び地”となる領域であっても、将来的な市場の成長とNTTグループとの親和性を予測しコーポレートベンチャーキャピタルとして接点を持つことができる。NTTドコモ・ベンチャーズはグローバルでのトレンドを見ながらこうした“先鞭投資”を行い、未来のパートナーシップを構築していく。