事業シナジーの創出(2) - NTTグループ連携 | 株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ
事業シナジーの創出(2) - NTTグループ連携

NTT DOCOMO VENTURES COLUMN

事業シナジーの創出(2) - NTTグループ連携

・データ活用を支える“社会の目” – セーフィー x NTT東日本
・“エネルギーのデジタルツイン”に向けた取り組み - METRON x NTTファシリティーズ

NTTドコモ・ベンチャーズはスタートアップとNTTグループの総合窓口として、両者をつなぐ役割を負っている。NTTグループは通信やIT事業だけではなく、金融や不動産、エネルギーなど様々な事業を展開しており、コラボレーションの形態も多岐にわたる。本稿では、継続的にシナジーが発展しているケースを紹介したい。

データ活用を支える“社会の目”

多くの産業において、店舗や施設、工事現場など様々な「現場」の状態を知るニーズは大きく、省人化のトレンドもあり防犯/監視カメラへの需要が拡大している。ただし一般的な防犯カメラは現場に設置したレコーダーに記録する、ハードウェア起点のアプローチが主流である。そのため記録媒体の交換など物理的作業の発生、データ保存容量の限界、録画データの利活用の難しさなど様々な課題が存在していた。

NTTドコモ・ベンチャーズが出資するセーフィー社は、こうした課題に対応するクラウド録画サービスを展開する。同社のカメラを購入してネットワークに接続するだけで、誰でも簡単にセキュアなクラウドベースの見える化ができる仕組みを実現した。

セーフィー社を担当する橋原は「カメラのミドルウェアから作り替え、ネットワークとの親和性を高めることで、記録から利活用に至るトータルの仕組みを転換させた。ソフトウェア起点の発想で、ハードウェアの制限を越えたアプローチがユニーク」と説明する。

映像がネットワークを介してクラウドに格納されることで、単なる現場の記録だけではなく、映像分析など様々な活用方法が生まれる。そのためNTTドコモ・ベンチャーズでは、通信インフラを持つと共に様々なデータ活用を推進するNTTグループとの高い親和性を感じていた。またNTT東日本も同時期に協業を検討していたこともあり、3者でのパートナーシップ議論を経て出資に至った。

東日本全域に拠点と膨大な顧客基盤を持つNTT東日本との提携により、セーフィーの販売数は飛躍的に増加。こうした販売連携からスタートし、セーフィーが開発したAPIを利用することで、NTT東日本と連携する様々なAIサービスと接続するスキームなど、発展的な協業が実現している。その他、NTTコミュニケーションズをはじめNTTグループ各社との連携も次々と決まり、出資後にも多くの協業プロジェクトが進んでいる。

現在、セーフィーは設置型から可搬型までカメラの幅を広げており、その簡便さからあらゆる場所で利用される可能性を持つ。家から街まで様々な「現場」の映像がデータ化されれば、そうした蓄積からインサイトを導き出し、人々の意思決定を高度化するためのインフラとなりうる。見える化という付加価値だけでなく、データドリブンな社会を支える“社会の目”として、セーフィーはNTTグループと共にその活動の場を広げていく。

“エネルギーのデジタルツイン”に向けた取り組み

脱炭素社会が求められる近年、企業にとってCO2排出量の削減は重要な経営課題となっている。特に製造業の現場では、AI/IoTの活用による業務の効率化や最適化と共に、その先にあるエネルギーコントロールに注目が集まっている。

フランスのスタートアップ・METRON が提供する産業施設向けエネルギー最適化ソリューション「METRON-EVA Factory」は、工場等の施設内のあらゆる機械の稼動状況や温度・湿度・生産量・技術者のノウハウ等のデータを集約し、独自の機械学習により各種機器の運用やエネルギー消費を最適化する。これまで製造現場の経験や勘に頼っていた部分を可視化し、“エネルギーのデジタルツイン”を生成する。既に欧州各国では大手製造業をはじめ導入実績が増えており、同社の日本展開にあたってはNTTグループとのパートナーシップを組むに至った。

METRONを担当するNTTドコモ・ベンチャーズのダオは「日本の製造業において様々な工程の可視化とコスト削減は大きなテーマ。結果的に消費電力が仮に2割削減できれば、浮いたコストを新たなリソースに転換し産業の高度化が可能。METRONのソリューションは特定の業種に特化せず汎用性が高いため、日本のように産業分野のすそ野が広い市場へのフィットも高いと考えた」と説明する。製造現場に限らず、同社のソリューションが仮想発電所やモビリティ、マイクログリッドなど社会生活全般のエネルギー最適化への展開が見込めることも後押しした。

またMETRON社は、NTTグループ内でファシリティマネジメントやエネルギー事業を手掛けるNTTファシリティーズ社も同時期に注目していた。出資検討段階でそのことを知ったダオは「そこから一気に検討が深まった。協議の初期段階から日本国内でパートナーシップを結んでシステムを提供するという明確なゴールがあった」と振り返る。

NTTドコモ・ベンチャーズは日本での同社サービスの共同展開に向けて両者間のコンサルティングを行うポジションをとり、どのような連携を目指すべきかの具体化や、PoC実現に向けた活動を実施。その後、NTTファシリティーズとMETRONの共同事業「AIファシリティコンシェルジュ powered by METRON」へと発展し、日本でのパートナーシップを展開するに至った。NTTドコモ・ベンチャーズはMETRON社の日本支社の設立や人材獲得などのサポートも行ってきたことで、事業と経営の両側面からNTTグループとの深い関係性が築かれていった。

「日本の製造業は、技術力はとても高いが、アナログな部分が数多く残っているのも事実。人材不足も深刻であり、デジタル化しないことにはグローバルの競争に負けてしまう」(ダオ)。METRONのソリューションは、日本の製造業を高度化するトリガーとして、さらなる発展が見込まれる。

優れたスタートアップとNTTグループ内のアセットを掛け合わせることで、新しい価値が生まれる。NTTドコモ・ベンチャーズはスタートアップと寄り添いながら、NTTグループの“水先案内人”として、協業を仕掛けながら両者の間をつないでいく。