日本発の健康管理用スマートリング「SOXAI RING」とドコモの共創。データ連携で睡眠改善の行動変容を図る|SOXAI ✕NTTドコモ ✕ NTTドコモ・ベンチャーズ

株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ(以下「NDV」)は健康管理用スマートリング「SOXAI RING(ソクサイリング)」を開発する株式会社SOXAI(以下「SOXAI」)へ、2024年に出資しました。SOXAI RINGは生活者の健康管理を目的とした指輪型のウェアラブルデバイス。心拍数や体表面温度、活動量といったバイタルデータを測定し、生活習慣や睡眠の質改善に役立ちます。
そんなSOXAIと株式会社NTTドコモ(以下「ドコモ」)はヘルスケア領域での新たな価値創出に向けた共創を推進中。SOXAI RINGの新モデル「SOXAI RING 1.1」を、2025年4月30日から全国のドコモショップやドコモオンラインショップなどで販売するとともに、ドコモが提供する「dヘルスケア」との連携を開始しています(プレスリリース)。
両社の共創の内容やそこに至る苦労、今後の展開などについて、SOXAI、ドコモ、NDVの3社に聞きました。

SOXAI RING 1.1をリリース。ドコモとの共創がスタート
── SOXAI RINGについて教えてください。
渡邉(SOXAI):
SOXAI RINGは、日本発の健康管理用スマートリングです。日本で初めてバイタルセンシング機能を搭載し、幅7.6mm、厚さ2.5mm、重さ2〜3gという超小型・軽量設計が特徴となっています。完全防水・防塵仕様で、風呂やプールでの使用にも耐えられる堅牢性を備えました。バッテリーは最大9日間持続し、約1.5時間で充電は完了。アクセサリーとしてのデザイン性にも配慮していて、幅広い年齢層のユーザーに支持されるように開発しました。
また装着者に負担をかけることなく、心拍数や心拍変動、血中酸素レベル(SpO2)*、体表面温度、活動量などのバイタルデータを高精度で測定できる点も特徴です。取得したデータは独自のアルゴリズムで分析され、睡眠状態、活動状態、ストレス状態などが専用アプリに表示されます。これらの健康指標は分かりやすくスコア化されるため、ユーザーは自身の特性に合わせた生活習慣や睡眠の質の改善に役立てることが可能です。
※ 血中酸素レベル(SpO2)の測定結果を表示する機能は今後提供予定。
株式会社SOXAI 代表取締役社長
スイス連邦工科大学の電磁界研究所にてETHフェローとして研究に従事後、世界的ICT企業のR&Dプロジェクトマネージャーを経て株式会社SOXAIを創業。横浜国立大学物理情報工学専攻、工学博士。日本学術振興会特別研究員。専門分野は、マイクロ・ナノフォトニクス、非侵襲センシングデバイス、ヘルスケアIoTデバイス。
関根(SOXAI):
そのSOXAI RINGを2025年にアップデートし、新モデル「SOXAI RING 1.1」として販売を開始しました。1.1ではハードウェアの設計を変え、アプリはまったく異なる技術のフレームワークを使って完全刷新。UIとデータ同期速度、睡眠や体調スコアの算出ロジックも大幅に改善しています。

株式会社SOXAI 執行役員COO
博報堂、ユニクロ、YCP Solidiance(本社をシンガポールに置くコンサルティングファーム)のマネージャー、Amazonのリテール部門担当部長、スタートアップ企業のMarketing Headを経てSOXAIに参画。キャリアを通じ一貫してMarketingを武器に事業拡大を実現。経営戦略-事業・ Marketing戦略-実行を一気通貫で推進する点が強み。
── みなさん、SOXAI RINGを装着していますね。使用感を教えてください。

榮江(ドコモ・プロダクトマーケティング本部):
最初SOXAI RINGを手に取ったとき、その軽さに驚きました。毎日充電するのは大変なので、電池が長持ちするのも嬉しいですね。私はこれまでスマートデバイスで睡眠を計測した経験はなかったのですが、SOXAI RINGを付けて睡眠状況を可視化してみたところ、入眠まで時間がかかるタイプだと判明しました。
データを見ながら「今日は早く寝よう」「ちょっと歩いてみよう」と意識していて、少しずつ自分の行動が変わっているのを自覚しています。早い時間から部屋のライトをオレンジにすると入眠が良くなっている気がして、今色々と試しているところです。
渡邉(SOXAI):
睡眠の質を改善している様子を伺えて嬉しいです。ありがとうございます。
── それでは、今回の共創について教えてください。
榮江(ドコモ・プロダクトマーケティング本部):
私が所属するプロダクトクリエーション部は、スマートフォンに限らず新しいデバイスやスマートフォンのアクセサリーなどについて、お客さま起点で企画・開発・調達・販路設計を一貫して担う部署です。例えばスマートウォッチや決済ができるスマートリングなどを扱っています。ミッションは、プロダクトとドコモのサービスを掛け合わせ、お客さまに新しい体験価値を提供し、お客さまのQOLを少しでも上げることです。
日本では、国民の5人に1人が睡眠に問題を抱えていると言われており、社会課題のひとつと言っても過言ではありません。少しでも社会課題の解決の一助となる価値をお客さまに提供したいと考え、SOXAI RINGの取り扱いを始めました。
具体的には「SOXAI RING 1.1」を、2025年4月30日から全国のドコモショップ、ドコモオンラインショップ、ドコモの家電レンタル・サブスクサービス「kikito」で他社に先駆けて取り扱いを開始しています。

株式会社NTTドコモ プロダクトマーケティング本部 プロダクトクリエーション部 クリエーションマーケティング担当
NTTドコモに新卒入社後、端末アフター関連業務に従事。端末の不具合や品質改善、テクノ系ドコモショップスタッフの指導・サポート、お客様対応等を担う。その後、長らくサービスアプリ関連業務に従事し、ドコモのサービスアプリのサービス立ち上げ、プロジェクト管理、開発管理、品質管理を担った後、現在プロダクトの企画を担当。
田口(ドコモ・ヘルスケアサービス部):
ヘルスケアの中でもデバイス連携に大きな期待がかかる中、私はSOXAI RINGとdヘルスケアとの連携による価値創造を担当しています。
dヘルスケアは、ドコモが提供する健康管理アプリです。これまで睡眠に関する機能はなかったものの、要望は少なからずいただいていました。そんなときに出てきたのが今回のSOXAIとの共創です。これが睡眠機能を推進する後押しとなり、歩数や体重、血圧・脈拍、体温、生活習慣と合わせて睡眠時間や睡眠ステージの割合がdヘルスケア内で一元管理できるようになりました。同性・同年代の利用者との⽐較も可能です。お客さまからの反応も良く、既に手放せない機能となっています。

株式会社NTTドコモ コンシューマサービスカンパニー ヘルスケアサービス部 プロダクトマネジメント担当
NTTドコモに新卒入社後、2021年から、健康経営ソリューションの企画・営業や事業戦略等のヘルスケア事業に従事し、現在はdヘルスケアを担当。
スマートリングは「ドコモっぽくない」?
── 具体的な共創の取り組みがリリースされ、ドコモショップなどでの販売が開始されてから3ヵ月ほどが経ちました。反響を教えてください。
榮江(ドコモ・プロダクトマーケティング本部):
ドコモのチャネルで指輪型デバイスを販売するということ自体はかなり大きなチャレンジでした。でも「携帯会社のドコモがヘルスケアリング?」という意外性もありつつ、dヘルスケアを利用されている健康意識の高いお客さまを中心に、関心を抱いていただけたと思っています。
私自身もSOXAI RINGを身に付けて周囲にアピールしているのですが(笑)、デザインもオシャレですし「それ何?」と聞かれる機会が多いですね。「これで睡眠管理ができるんだよ」と宣伝しています。
渡邉(SOXAI):
榮江さんからしても「スマートリングはドコモっぽくない」という印象があるんですか?
榮江(ドコモ・プロダクトマーケティング本部):
ドコモとしては新たなデバイスにも色々とチャレンジしているところですが、お客さまへの浸透はまだまだ道半ばです。最近、学生向けの就活イベントに出展したり、ある大学で講義をしたりする機会があったのですが、その際にも「ドコモが健康管理をできるスマートリングを販売しているとは知らなかった」という声が少なくありませんでした。
渡邉(SOXAI):
そんなところで宣伝してくれていたんですか、知らなかったです(笑)。ありがとうございます。
榮江(ドコモ・プロダクトマーケティング本部):
イベントで「ドコモはこんなこともやっているんですね、面白そう、インターンに申し込みます!」なんて言ってくれる学生もいたのは嬉しかったですね。
渡邉(SOXAI):
それは思わぬ副次効果ですね。

榮江(ドコモ・プロダクトマーケティング本部):
とはいえ販売実績としてはまだまだ広げていけるポテンシャルはあると考えています。オンラインチャネルでは反応が良いものの、ドコモショップではまだ店頭のスタッフにSOXAI RINGの良さが十分に伝わっていないのが実態です。スタッフ向けに魅力を伝える機会の提供や販売オペレーションの改善などに取り組むことで、さらにSOXAI RINGを必要とするお客さまに届けていきたいですね。
渡邉(SOXAI):
SOXAI RINGは最先端のウェアラブルデバイスですし、実際に見て手に取らないと購入しにくいという方は少なくないと思います。そういう意味で、全国に2,000あるドコモショップで取り扱っていただけるのは、SOXAIとしても非常にインパクトのあることなんです。この機会を活かしてなんとか販売増に繋げたいですね。
関根(SOXAI):
私達はプロダクトには自信がありますが、知名度はまだまだ。だから誰かに説明する際に「ドコモで扱ってもらっている」「全店舗に置いてもらっている」と言えること自体が信頼性の担保に繋がっているという面もあります。ドコモのような企業との共創が、会社の信用力の向上に繋がっているのも間違いありません。
田口(ドコモ・ヘルスケアサービス部):
サービス面での連携ですが、前述のようにSOXAI RING 1.1と連動させることで、dヘルスケアで睡眠状況を可視化できるようになっています。

田口(ドコモ・ヘルスケアサービス部):
SOXAI RINGの特徴は、睡眠を中心とした様々なバイタルデータの可視化だと認識しています。dヘルスケアに、健康の基本でもある睡眠が追加され、より利用者さまの健康管理に貢献できるようになりました。
またdヘルスケアではエンタメ要素やリワード要素を用いて、睡眠を含めた健康リテラシーの向上を図れるようになっています。例えば、「体重を記録しよう」「睡眠などの健康コラムを読む」などのミッションをクリアすると、抽選でdポイントがもらえるんです。
関根(SOXAI):
ゲーム感覚で使ってもらうというのは我々も大事だと考えています。SOXAIではQOLスコアが出せるので、例えば「スコアが85点を超えたらdポイントを付与」といったことが将来的にできると嬉しいです。
田口(ドコモ・ヘルスケアサービス部):
dヘルスケアとデバイスを一緒に使っているお客さまは、dヘルスケアのサービス利用の継続率も高い傾向にあります。SOXAI RINGとあわせてdヘルスケアを利用していただくことで、健康行動でdポイントがもらえたり、ミッションやコラムなどで健康リテラシーが身に付けられたりといったシナジーが出せると考えているので、今後も密に連携していきたいです。
CVCが間に入り、ワンチームの雰囲気を醸成
── 共創実現にあたって苦労した点を教えてください。
田口(ドコモ・ヘルスケアサービス部):
SOXAIがdアカウントの実装を前向きに議論してくださったのが印象的でした。また、SOXAIアプリ内にdヘルスケアへの送客導線も置いていただき、相互連携まで辿り着けたのは、SOXAIの柔軟性のおかげだったと思います。
渡邉(SOXAI):
そう聞くとSOXAIだけが頑張ったように聞こえてしまいますが、ドコモ側には相当歩み寄っていただきました。その期待に応えなければならないという気持ちが強かったですね。本当はもっと厳しくしたいんだろうなとは薄々感じながらも(笑)、なんとか現実解を目指してみんなでやっていこうという雰囲気を作っていただいていました。
今井(NDV):
NDVは2024年にSOXAIに出資していますが、単に出資をして終わりというわけではなく、今回の協業においてはSOXAIとドコモ、つまりスタートアップと大企業という異なるカルチャーを翻訳する形でサポートさせていただきました。

株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ Investment & Business Development Manager
NTTドコモに新卒入社後、PRプランナーとしてコーポレートコミュニケーションの分野に長らく従事。経営戦略・出資協業・新規事業・先進技術などの対外発信戦略の立案と実行を担う。
2016年からモバイル関連の国際展示会MWC Barcelonaのプロジェクトを手掛け、5G/6GのユースケースやOpen RAN事業などの海外発信を主導。
2023年7月にNTTドコモ・ベンチャーズに参画。現在スタートアップとの協創・投資およびPRを担当。
今井(NDV):
例えばミーティングの中でドコモが要求した内容に対して、SOXAIの皆さんが疑問を感じているだろうなと見て取れた場面があったんです。そういうときにはSOXAI側に「実は今度ドコモ内でこういう会議が予定されていて、そこにはこういう人たちが出席して、論点はこれだから、今のうちにこの課題を優先的にクリアしておきたい」といった内容を伝え、コミュニケーションに齟齬がおきないようにフォローしていました。
逆にドコモ側には、SOXAIの経営状況を踏まえて彼らの動き方や優先順位などを伝えることで、協業検討がスムーズに進むよう仲介していました。
スタートアップと事業部の両方の事情を知っているCVCが入ることで、両社の議論が少しでも円滑になるような補足情報を伝えるように心がけたつもりです。
本件に限らず、ドコモとの協業検討において疑問や難しさを感じたスタートアップの皆さんには、ぜひCVCを上手く使っていただきたいと思っています。
榮江(ドコモ・プロダクトマーケティング本部):
品質をどこまで保つべきか、毎週のミーティングでお互いの理解を深めることも含め、常に擦り合わせていました。当たり前ではありますが、スタートアップと大企業で開発に対する考え方や進め方は大きく違います。
私は以前アプリの開発を担当していましたが、お客さまに安心・安全にサービスをご利用いただくために、ドコモのような大企業は開発に慎重さを求めます。一方でSOXAIの皆さんはお客さまへの提供価値を少しでも高めようとギリギリまで調整していました。その姿勢は印象的でしたね。今回の新アプリについても、リリース直前まで開発を重ねていたのは驚きました(笑)。
関根(SOXAI):
耳が痛いです(笑)。

今井(NDV):
NDVはこれまでもSOXAIが品質改善に取り組む姿を1年以上に渡って見てきたのですが、ドコモとしてデバイスを取り扱うからには、さらに高い品質に引き上げていく必要がありました。そこからドコモと一緒に品質改善に取り組む形になったのが、今回の新モデルである「SOXAI RING 1.1」です。
渡邉(SOXAI):
正直、サービス品質をドコモの目線に合わせていくのは大変でしたが、色々とフォローしていただきながら、なんとかリリースに漕ぎ着けたという状況ですね。
そういう意味では、今回のドコモとの共創がなかったら、こんなに急ピッチにアプリをリニューアルしなかったかもしれません。新しくプロダクトを作り直して、しかもそれをドコモで最初に出すというのは、今考えてもかなり無謀なチャレンジだったと思います。でもそれをクリアできたのは、ワンチームとして連携できたからこそですね。
関根(SOXAI):
大企業とスタートアップが共創する場合、下手をすると「大企業対スタートアップ」という対立構造になってしまいます。でも今回は「SOXAI RINGプロジェクト」というワンチームになっていただいて、NDVだけでなく榮江さんや田口さんにもドコモ側との矢面に立っていただきました。チームとして成果を出そうと尽力してくれて、ありがたかったです。
データ連携を強化し、行動変容を促す
── 共創の今後の展開を教えてください。
今井(NDV):
SOXAIとの共創は、コンシューマー向けだけではなく、ビジネスユースも含めた幅広い展開ができる可能性を秘めています。実際、NTTドコモビジネス社などでもSOXAI RING 1.1の取り扱いを開始していて、企業向けの健康経営サービスとの連携も強化しているところです。
渡邉(SOXAI):
NTTドコモグループは販売力が非常に強いので、コンシューマー向け・ビジネス向け両面で連携できるのは非常にありがたいです。
またヘルスケアプロダクトの価値はやはりデータ。こちらの連携範囲も拡大させていきたいですね。

田口(ドコモ・ヘルスケアサービス部):
データという意味では、今回の共創でSOXAI RINGの睡眠データをdヘルスケアに連携できるようにしたものの、これはあくまでファーストステップです。次は睡眠改善や行動変容に繋がるソリューションの開発を目指しています。
関根(SOXAI):
現状認識から行動変容を実現することはSOXAIでも常に議論していますが、単独では限界もあったんです。今回ドコモと連携することで、例えばdヘルスケア内のポイントをモチベーションにして、睡眠改善に励んでもらうというやり方も考えられるようになりました。SOXAIとして最もやりたいのは、ユーザーの皆さまを健康にすること。共創をもっと深め、叶えていきたいですね。
田口(ドコモ・ヘルスケアサービス部):
ドコモでは、スマートフォンから得られるデータを活用し、睡眠などの生活習慣をもとに様々な健康リスクを推定するAIの開発を進めています。「昨日はよく眠れましたね」「今日は少し睡眠不足かもしれません」と示せるのが理想です。そこにSOXAI RINGによる血中酸素濃度や心拍も組み合わせれば、お客さまに新たな価値を提供できるはず。より連携を深めていきたいですね。
今井(NDV):
SOXAI RINGが取得するデータと、ドコモのスマートフォンや行動由来のデータを掛け合わせて新しい価値を創るというのが、共創の大きな世界観です。
渡邉(SOXAI):
改めて、大きな構想ですよね。そこにSOXAI RINGのデータを活用してもらえる可能性があるというのは、ワクワクします。
今井(NDV):
SOXAIとドコモの共創はこれで終わりではありません。引き続きよろしくお願いします。

(執筆:pilot boat 納富 隼平、撮影:ソネカワアキコ)