日本のIPを世界へ。コンテンツの制作・流通・販売すべてを手掛ける、NDVのエンタメ投資に迫る | Minto ✕ NTTドコモ・ベンチャーズ | 株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ

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2024.04.17

日本のIPを世界へ。コンテンツの制作・流通・販売すべてを手掛ける、NDVのエンタメ投資に迫る | Minto ✕ NTTドコモ・ベンチャーズ

日本のIPを世界へ。コンテンツの制作・流通・販売すべてを手掛ける、NDVのエンタメ投資に迫る | Minto ✕ NTTドコモ・ベンチャーズ

2024年、株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ(以下「NDV」)は、SNS、Webtoon、Web3などを活用した新たなエンタメビジネスを創造する株式会社Minto(以下「Minto」)への出資を発表しました。

Mintoはコンテンツの制作、流通、販売をフルラインナップで提供することに強みを置くスタートアップ。自社・他社のIPと新しいテクノロジーを活かしながら、コンテンツを国内外で展開させます。

Mintoのビジネスモデルは。コンテンツを海外展開させる秘訣は。NDVはなぜMintoに投資したのか。両社の共創内容は。Minto代表の水野和寛さんと、NDVの投資担当である川本諒に聞きました。

Mintoの水野氏(左)と、NTTドコモ・ベンチャーズ 川本氏(右)の対談の様子
Mintoの水野氏(左)と、NTTドコモ・ベンチャーズ 川本氏(右)の対談の様子

コンテンツの制作、流通、販売すべてを扱う

── Mintoの会社・サービス概要について教えてください。

水野(Minto):
Mintoは、新たなテクノロジーを活用し、社会変化を捉え、エンターテイメントビジネスをアップデートしようとするスタートアップです。特に得意なのは、漫画やアニメ、キャラクターなどのコンテンツ。それらとSNSやWebtoon、Web3といったテクノロジーを掛け合わせた事業を展開しています。

水野 和寛 | MIZUNO Kazuhiro
水野 和寛 | MIZUNO Kazuhiro
株式会社Minto 代表取締役 CEO

(株)寺島情報企画でDTMマガジン編集者とコンテンツプロデュースに従事。
有料会員数1位のデコメサイトのプロデュース、渋谷109、フジテレビ等との共同事業を立ち上げ、同社の執行役員に就任&子会社ゲーム会社(株)テクノードを設立し代表取締役に。
「Touch the Numbers」等のヒットアプリのプロデュースを経て、2011年に株式会社クオン(現Minto)を設立。

水野(Minto):
Mintoは、私が創業した株式会社クオンと、株式会社wwwaapが2022年に経営統合して設立された会社です。メンバーは約120名で、国内に約80名、タイ、中国、ベトナム支社に合わせて約40名が在籍しています。

Mintoのビジネスモデル上の特徴は、コンテンツの①制作(コンテンツクリエイション事業)、②流通(コンテンツディストリビューション事業)、③販売(コンテンツソリューション事業)という、バリューチェーンに沿って事業を組織している点です。

NTTドコモ・ベンチャーズ川本氏とMinto水野氏の対談

水野(Minto):
先に③販売から説明させてください。コンテンツ販売に関する事業はコンテンツソリューション事業と呼んでいます。

当該事業におけるMintoの強みは、コンテンツを単に販売するだけでなく、コンテンツに広告という付加価値を与えて収益化している点です。我々の裏側にはSNSで活躍する漫画家やイラストレーターといったクリエイターがいて、彼・彼女らの力を借りて企業の課題を解決する広告クリエイティブコンテンツを制作し、SNS上で拡散しています。わかりやすいところでは、Xに流れてくる漫画広告ですね。

Xに流れてくる漫画広告

水野(Minto):
最近は大手出版社からIPを預かり、有名な漫画を広告に使うケースも増えてきました。また漫画だけでなくYouTubeやTikTok用のアニメ動画も制作しています。直近では、アニメ『範馬刃牙』と『どん兵衛』がコラボしたYouTubeアニメCMを制作しました。

アニメ『範馬刃牙』と『どん兵衛』がコラボしたYouTubeアニメCM ©板垣恵介(秋田書店)/範馬刃牙製作委員会
©板垣恵介(秋田書店)/範馬刃牙製作委員会

水野(Minto):
次に②流通事業です。これはコンテンツディストリビューション事業と呼んでいますが、端的に言うと、Mintoが保有する、または他社が保有しているIPを海外へと展開する事業です。

例えば以下の写真は、タイはバンコクのサイアムにある大型ショッピングモールに、同国で人気のキャラ「うさぎゅーん」のポップアップストアを出店したときのものです。

「うさぎゅーん」のポップアップストア
「うさぎゅーん」のポップアップストア(提供:Minto)

水野(Minto):
コンテンツディストリビューション事業では、例えば『ポケモン』の東南アジア展開もお手伝いしています。

『ポケモン』の東南アジア展開

水野(Minto):
海外展開にあたっては、IPのグッズ化や店舗展開といったオフラインだけでなく、メタバースやWeb3といったオンラインでも展開しています。ブロックチェーンベースのメタバース『The Sandbox』には『キャプテン翼』や『北斗の拳』のメタバース空間を作りました。

キャプテン翼のメタバース Ⓒ高橋陽一/集英社
Ⓒ高橋陽一/集英社

水野(Minto):
最後に①制作のコンテンツクリエイション事業です。これはWeb3やWebtoon、新しいキャラクターを制作し、それをお客さまに買ってもらうというビジネスです。わかりやすいところでは、チャットアプリ向けに『ベタックマ』『うさぎゅーん!』『ビジネスフィッシュ』といったキャラクタースタンプを制作し、販売しています。

またMintoは2021年にMinto StudioというWebtoonコンテンツを制作するためのスタジオを作りました。現在は年間20~30本のWebtoonを制作しています。それこそNTTドコモとも縦型カラー漫画を共同制作していて『おデブ悪女に転生したら、なぜかラスボス王子様に執着されています。』というコンテンツは既に各種漫画アプリで総合1位を獲得したりと、結果も出てきています。

追い風が吹く日本のコンテンツ。海外展開の注意点は

IPやコンテンツを起点に、多岐に渡って事業展開しているとのことですが、NDVとしては、Mintoはどのような会社だと捉えているのでしょうか。

川本(NDV):
水野さんが説明してくれたように、Mintoはコンテンツを制作・流通・販売している会社です。つまりコンテンツに関連するビジネスを川上から川下までフルラインナップで提供できるのが、Mintoの強みだと認識しています。これができる会社は意外と多くないんですよ。

川本 諒  | KAWAMOTO Ryo
川本 諒 | KAWAMOTO Ryo
株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ Manager 投資担当
2016年に地銀系VCに出向し、スタートアップ投資を担当。
その後、同グループの投資専門子会社設立に伴い、設立当初よりバイアウト投資・ファンドレイズ等、幅広くファンド業務に従事。
創業期からPre-IPOラウンドまで幅広いステージの企業に対し、これまでに20社以上の投資を行う。
2023年10月よりNTTドコモ・ベンチャーズへ参画。

水野(Minto):
もちろん3つの領域を担っている伝統的な会社もありますが、デジタル領域でこの3つで存在感を発揮しているのは確かに少ないですね。我々としてもそのポジションをしっかり確立し、業界での認知度を高めていきたいと思っています。

── 既に海外展開している点も、Mintoの特徴かと思います。海外拠点はどのような役割を担っているのでしょうか。

水野(Minto):
よく誤解されるのですが、コンテンツの制作機能は日本にあって、海外拠点でオフショア的にコンテンツを制作しているわけではありません。日本の役割はコンテンツ制作とグローバル全体の管理。海外拠点の役割は、日本で作ったキャラクターやコンテンツを広げていくためのその国でのマーケティングです。大まかに言うと、日本のクリエイターが制作したコンテンツを、海外チームが販売するという役割分担ですね。

── 『ポケモン』や『キャプテン翼』は海外でも人気があると聞いたことがあります。日本のコンテンツはどの程度海外で知られているものなのでしょうか。

水野(Minto):
『ポケモン』や『キャプテン翼』は確かに、海外で人気があることが知られていますよね。一方で、日本で少し有名なコンテンツだからといっても、グローバルな動画配信プラットフォームやSNSを通じて広まっていないコンテンツは、海外で人気に火が付くことはほとんどありません。つまり、日本のコンテンツ全般が海外で広まるというわけではないんです。

逆に、現地で1回でも過去にブームになったことがあるコンテンツは広く知られていますし、再度流行る可能性はあります。例えば仏教徒が多い国だからか、タイでは『一休さん』が今でも非常に人気です。

── Mintoが現在支社を置いているのはタイ、中国、ベトナムだと聞きました。進出する国・地域はどのように決めているのでしょうか。

水野(Minto):
Mintoは昔から、チャットアプリ用にキャラクターの絵文字やスタンプを制作し、海外展開してきました。当然ながらそれらに対する反応は各地域で異なります。例えば欧米の方 にとっては二頭身の動物キャラクターは、ちょっと可愛すぎたり子供っぽく感じられたりするみたいですし、逆にアジア地域は日本と文化が近いのですんなり受け入れてくれます。そうやって色んな国・地域でキャラクターやスタンプへの反応を調べ、反応が良かった国に拠点を展開しているんです。逆に、反応が薄い国へ進出しても、展開は難しいかと思います。

NTTドコモ・ベンチャーズ川本氏とMinto水野氏の対談

水野(Minto):
また状況次第でマネタイズ方法も変わってきます。例えば日本や韓国だとスタンプの購入は一般的ですが、中国やタイ、ベトナムではそういった文化はありません。そのため後者の国々ではスタンプ自体は無料でダウンロードしてもらい、キャラクターが人気になった後に、グッズやイベント展開で収益化を図ります。

──東南アジアに進出したい場合は、企業はどのように国を選択すればいいのでしょうか。

水野(Minto):
まず、「東南アジア」と一括りに考えるのは避けた方がいいでしょう。ビジネスで収益化まで考えるなら、その国ごとに文化は異なるので、その差異をしっかり把握しておくことが肝要です。

とはいえ、収益化の前のSNSを通じたマーケティングという観点では、タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシアはバズるコンテンツに対しての感覚が近い印象があります。また東南アジアでは、タイで流行ったものは他の国でも流行りやすいんです。そのためエンタメコンテンツで東南アジアに進出するとなったら、まずはタイへのマーケティングやビジネス展開を考えるのがいいでしょう。

── Mintoに相談に来る企業は、どの程度、進出国や方法を考えているのでしょうか。

水野(Minto):
クライアント企業から相談いただく時点ではまだ詳細は決まっておらず、「なんとなくアジア展開できると思っている」「タイやベトナムで自分たちのコンテンツが人気らしい」くらいの解像度のことが多いですね。そのためまずは「テストマーケティング的に、この国で、いったんスタンプを作ったり、SNSアカウントを作ったりしてみましょう」ということから始めることが少なくありません。もしこの記事を見ている方でIPの海外展開に関心をもっている方がいれば、どんな段階でも気軽に相談に来てください。

NDVのエンタメ投資。Mintoと築く共創とは

── それではMintoとNDVの関係について聞かせてください。両社の共創内容はどのようなものでしょうか。

川本(NDV):
基本的には各社が保有するIPをコラボレーションさせたり、IPを生み出すためのコンテンツやプラットフォームを共同制作したりするものです。

水野(Minto):
NTTドコモとの連携は少しずつ始まっていて、2023年には「うさぎゅーん!」と「dポイントクラブ」「ポインコ兄弟」がコラボし、期間限定LINEスタンプを配信しました。まだ詳細は明かせないものの、Webtoonや、アバターアプリやゲームコンテンツの制作などの取り組みも進めています。

「うさぎゅーん!」と「dポイントクラブ」のコラボスタンプ(提供:Minto)
「うさぎゅーん!」と「dポイントクラブ」のコラボスタンプ(提供:Minto)

川本(NDV):
水面下では色んな取り組みが進んでいますよね。IP周りのことがあれば、すぐにMintoに相談して、連携させてもらっています。

── NDVは、これまでIPやコンテンツへといった領域のスタートアップへはどの程度投資してきたのでしょうか。

川本(NDV):
NDVとしてはこれまでBtoBのスタートアップへの投資が多く、toCへの投資は多くないんです。一方でNDVは2023年に、新たに投資方針を策定しました。その中での注力分野の一つがエンターテインメントです。またNTTドコモは自社のIP管理だけでなく、他社のIPプロデュースにも事業を広げていきたいと考えていました。

NDVとしても、NTTドコモとしてもIP・コンテンツ領域への関心を高めているところにMintoへ投資する機会が降ってきたので、共創を前提に投資させていただいた、というわけです。

NTTドコモ・ベンチャーズ川本氏とMinto水野氏の対談

水野(Minto):
Mintoは今、独立系ベンチャーキャピタルから大きく資金を調達して成長していくというよりは、既存事業をさらに伸ばしていくフェーズにあります。そのため既存株主から追加調達はさておき、経営統合後に新たに株主に招くのは事業連携してシナジーを発揮できる会社やCVCにしたいと考えていました。その1社がNTTドコモ(・ベンチャーズ)だったというわけです。

御存知の通りNTTドコモは、日本でも有数の消費者接点をもつ会社。我々のようなコンテンツを制作する会社としては、そんな会社と資本業務提携できればチャンスが広がるのは間違いありませんからね。

Mintoは強力なパートナー。NDVはCVCとして汗をかく

── Mintoへの投資に際して、NDV社内ではどのような議論がされたのでしょうか。

川本(NDV):
そもそも、実は投資以前から、MintoとNTTドコモはお付き合いがあったんです。

そうですね。NTTドコモの「スゴ得コンテンツ」にずっとゲームを提供していたりと、1年ほど前からNTTドコモの新領域IP・コンテンツとはお仕事をしていました。

川本(NDV):
そのようなプロジェクトベースの実績もあったので、MintoのことはNTTドコモとしても既に知っていましたし、IP・コンテンツ周りで頼りになることはわかっていました。

そんな中、NDVが先述した新しい投資方針を出して投資検討に入ったものですから、社内のメンバーはみんな、前向きに相談に乗ってくれました。

── 両社の今後の共創プランについて教えてください。

水野(Minto):
繰り返しになりますが、Mintoは自社のIPだけでなく、お預かりした他社のIPも使って様々なコンテンツを制作しています。これらすべてを上手く組み合わせ、コンテンツを制作するだけでなく、NTTドコモのマーケティングに活かすような共創を展開していきたいです。またWeb3やメタバース領域での取り組みもまだ始まったばかりなので、こちらの共創も加速させていきたいですね。

川本(NDV):
先述したようにMintoは、コンテンツやIPを川上から川下まですべて扱える会社です。そのためNTTドコモがどんな形でIPを展開するにしても、Mintoは強力なパートナーになるはず。事業部の担当者を紹介したりしながら、IPやコンテンツ、エンタメについてはMintoさんの力を最大限活かしていただきたいです。

NTTドコモ・ベンチャーズ川本氏とMinto水野氏の対談

水野(Minto):
ありがとうございます。CVCにとって事業連携は非常に重要な関心事だと思いますが、NDVはMintoとNTTドコモの事業部をとりもってくれて、既に大事なパートナーとなっています。出資いただいてからまだ2カ月程度なのに、色んなことに尽力してもらいました。共創に関することから、「うちのドラマを撮影したいからオフィスを貸してください」なんてものまで幅広く対応してくれています。何でも気軽に相談させてもらっているのはありがたいですね。NDVは理想のCVCと感じています。

川本(NDV):
ありがとうございます。NDVは新しい投資方針の中で、単に出資するだけでなく「より戦略シナジーを追求するCVCに進化していく」ことを掲げています。そのために汗をかくのもNDVの仕事なので、そこを評価いただけるのは嬉しいです。今後も遠慮せずにガンガン連絡して下さい。

水野(Minto):
ありがとうございます、ぜひよろしくお願いします。

── 最後に、Mintoの今後の展望を教えてください。

水野(Minto):
まずは海外展開に引き続き力をいれていきたいです。今、日本のコンテンツは海外でかなり受け入れられていて、エンタメビジネスには強い追い風が吹いていますし、我々もその恩恵を受けて、事業が軌道に乗っていると感じています。

またここからさらに事業を広げていくためにも、自分たちのIPだけではなくお預かりしたIPを上手く活用し、日本のエンタメ・コンテンツ産業を大きくしていきたいと考えています。Web3やWebtoonなど、新しい領域でのIP展開にも注力していきたいですね。

川本(NDV):
共創に限らず、我々もMintoにどんどん貢献していきたいと思います。よろしくお願いします。

水野(Minto):
こちらこそ、よろしくお願いします。

── 水野さん、川本さん、本日はありがとうございました。

NTTドコモ・ベンチャーズ川本氏とMinto水野氏の対談

(執筆:pilot boat 納富 隼平、撮影:ソネカワアキコ)