「けんさぽ」が狙うはパーソナルヘルスレコード経済圏。パーソナルエージェント作成のための共創へ|Personal Health Tech ✕ NTTドコモ・ベンチャーズ | 株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ

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2025.12.23

「けんさぽ」が狙うはパーソナルヘルスレコード経済圏。パーソナルエージェント作成のための共創へ|Personal Health Tech ✕ NTTドコモ・ベンチャーズ

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 株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ(以下「NDV」)は2025年7月、企業向け健康管理サービス「けんさぽ」などを提供する株式会社Personal Health Tech(以下「PHT」)への出資を発表しました。

 けんさぽはSaaSとBPOを組み合わせた健康管理サービスで、企業や医療機関での導入が進んでいます。PHTが長期的に狙っているのは、国民のパーソナルヘルスレコード。「ユーザーのパーソナルエージェント」を目指すドコモ・NTTグループは、PHTと連携しヘルスケア面での共創を狙います。

 PHTのビジネスモデルや両社の共創プランについて、PHT代表の新田哲哉氏とNDVの三好大介に聞きました。

PHTの新田哲哉氏(左)、NDVの三好大介
PHTの新田哲哉氏(左)、NDVの三好大介

高まる健康管理ニーズを受けて開発された健康管理システム

── 最初に、PHTが運営するサービスについて教えてください。

新田(PHT):
 PHTが運営しているのは、企業向け健康管理サービス「けんさぽ」です。健康管理システムをSaaSとして、健康診断業務代行をBPOとしてセットで提供し、企業による従業員の健康管理業務の負担を大幅に軽減しています。

 ストレスチェックや健診データ入力の代行、健康分析レポートなどのオプションサービスも充実させており、企業ごとに最適なプランを提供。データを活用して健康診断の受診率や有所見者、高ストレス者を可視化し、職場環境の改善に役立ててきました。2025年10月末時点で1,313の企業に導入いただいています。

 また医療機関向けには「けんさぽ for medical」を開発。検診システムや健康管理アプリなどを提供し、医療機関のDXを実現しながら送客の支援をしています。

田 哲哉 | NITTA Tetsuya 株式会社Personal Health Tech 代表取締役
新田 哲哉 | NITTA Tetsuya
株式会社Personal Health Tech 代表取締役

28歳でBtoB向けのセールスの会社を起業し、様々な分野で業界TOPレベルの販売実績を作る。
その後、数十を超える自社のサブスク型サービスの開発と運営を行う。
その経験を活かし、サブスク型ビジネスに特化して、コンサル事業を行い、市場調査、プロダクト開発、事業開発、セールス、管理機能開発、BPOなど運営の委託を請け負う。
過去に手掛けた事業は60以上、プロダクトの開発は120を超える。

── けんさぽが必要とされる背景について教えてください。

新田(PHT):
 近年、健康経営の認定制度や人的資本情報の開示拡充により、企業の健康管理の在り方が変わってきました。健康経営の充実は、採用面でも重要性が高まっています。

 今までは健康診断とストレスチェックをして就業判定(編注:健康診断の結果を用いた、産業医による有所見者(異常が見つかった従業員)に対する判断のこと。労働安全衛生法にて義務付けられている)をしていればよかったのですが、近年は検査結果のデータ分析や健康管理体制の整備も必要となってきました。

 また、医療機関の70%程度は、健康診断の結果を紙で企業や従業員に提供しています。そのためSaaSだけを用意しても、企業は自社でデータを入力しないといけません。それならば、我々がデータ入力もしてしまった方が、企業にとっては利便性が高いですよね。こういった時代の変化にあわせたシステムがけんさぽです。

── 確かに健康診断結果は紙で送られてくるイメージがあり、データで管理しているイメージはあまりありません。

新田(PHT):
 まったくデータに対応していないという医療機関も多いですし、データ化はできるけど有料というケースも少なくありません。医療機関はいまだに予約の70%をFAXで受け付けているというくらい、DXが進んでいませんからね。多店舗展開しておらず小さなクリニックが多いという点も、DXが進みづらい原因かと思います。

 ちなみに、企業がけんさぽを導入しても、医療機関側は今までのフローを変える必要はありません。

── 企業は健康診断などのデータをどのように活かすのでしょうか。

新田(PHT):
 まずは従業員の健康管理です。産業医にもアカウントを発行するので、けんさぽ内で就業判定ができるようになります。健康診断やストレスチェックなどの結果はすべてデータ化され「この数値が高いのは、全体のx%」「昨年と比べて数値が改善した」「この拠点はストレス度が高い」といった情報分析も可能です。

── 法令で要求されている拠点ごとの分析も可能になるのですね。

 はい。ある拠点のストレスの原因が人間関係なのか仕事量なのかも分析できるようになっています。

── 料金プランについても教えてください。

 「データ化プラン」「健診代行プラン」「健診おまかせプラン」の月額料金が、1人あたりそれぞれ200円、250円、300円。アプリを利用しなければ、それぞれのプランが100円ディスカウントされ、100円、150円、200円でご利用いただけます。競合他社はおよそ300円〜500円程度なので、かなり価格競争力があるはずです。

── 企業の従業員にもメリットはありますか?

新田(PHT):
 従業員は、けんさぽ経由で登録されたデータの検査結果を、アプリやウェブサイトから閲覧できるようになります。繰り返しになりますが、健康診断の結果は紙面で提供されるケースが多く、それを毎年分ちゃんと保管している従業員は多くないでしょう。

 一方でけんさぽなら、人間ドックや健康診断の結果がいつでもオンラインで確認でき、グラフで推移が見られたり、基準値と比較できた りもします。血糖値やコレステロールの値など、問題があればアラートも出るようにしました。

新田(PHT):
 また最近、けんさぽを共同開発している藤田医科大学からのリクエストもあって、ワクチンの接種履歴も確認できるようにしました。乳幼児の頃は母子手帳でワクチンの接種履歴を管理しているケースが多いですが、大人になってから管理しているケースは少ないのです。海外出張をする方には接種が必須となるワクチンなどもあるので、接種履歴は企業にとっても重要です。

 ちなみに、スマートウォッチなどから得た運動などのバイタルデータを組み合わせることもできます。健康診断などの検査結果とバイタル情報の両方が見られるアプリは多くありません。その意味でもけんさぽは、従業員の方々のお役に立てると思います。

競争力の源泉は「営業力」

── NDVが感じたPHTの強みを教えてください。

三好(NDV):
 誤解を恐れずに言いますが、PHTが提供するサービスは、他社でも似たようなものは作れなくはないはずです。データ入力だって、それ自体は決して難しいことではありません。

 ではPHTの何が素晴らしいのかというと、営業力です。2022年にサービスを開始して以来、3年ほどで1,300以上の企業に導入されているのも驚異的ですし、2024年に病院向けにもサービスを開始して以来、一般的に医療機関への導入は大変とも言われているにもかかわらず、有名な医療機関も含め、既に183社に導入されています。サブスク型で、一旦導入されれば基本的には収益が積み上がっていくのもいいですよね。

三好 大介 | MIYOSHI Daisuke
株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ Investment Managing Director

約20年間VC業界に在籍し、30社近くのベンチャー投資を実行。
IPOやM&Aによるexit等豊富なトラックレコードを誇りつつ、事業連携を伴った投資も得意とする。
その後、イオンリテールの新規事業・Eコマース事業の責任者として事業改革を行い、2023年6月よりNTTドコモ・ベンチャーズのManaging Directorに就任。

── 医療機関への営業の秘訣を教えてください。

新田(PHT):
 当たり前ですが、医療機関側からすると、お客さまである患者が増えれば嬉しいわけです。その点、PHTは1,300社以上の企業を既に顧客として抱えていて、その従業員を紹介できます。それで導入に至ってくれているというわけです。

── 一方の企業側は、なぜけんさぽを導入するのでしょうか。

新田(PHT):
 先述した価格の優位性はあるでしょう。ただ、この業界はサービス提供側が自分たちの採算を重視していて、必ずしも利用企業にとってのベストを提供できてこなかったという面があります。その点、PHTは企業の抱えている課題を解決する最適なサービスを提供してきました。これが企業、ひいては医療機関への導入に繋がっています。

── 企業への導入が医療機関への導入に繋がったのですね。

新田(PHT):
 その通りです。PHTとしては、パーソナルヘルスレコード(以下「PHR」)の一部である健康診断などの検査結果データを、どのように集めるかが課題でした。そのデータをもっているのは、企業か病院か自治体です。この3つを押さえるための戦略を考えた結果、まずは企業へ価値を提供することにしました。そこから次は病院に展開した、というわけです。

三好(NDV):
 PHRは非常に価値あるデータですが、それを集めるのはかなり難易度が高いと認識しています。その点PHTの戦略は非常に優秀ですし、実行力も素晴らしいですよね。

パーソナルヘルスレコードを用いたパーソナルエージェントへ

── PHTとドコモやNTTグループとの共創プランについて、教えてください。

三好(NDV):
 実は両社の短期的な連携は計画していません。ドコモ・NTTグループが並走するのは、PHTの長期的なプランです。

新田(PHT):
 PHTは将来的に、検査結果データを分析することで、その人に合った食べ物や運動など、健康寿命を伸ばすために必要なアクションを、企業や商品と紐づけながら提示したいと考えているんです。

 中国の平安保険という保険スタートアップは、提供するヘルスケアアプリ経由で、ユーザーの35〜40%が保険に加入していると言われています。PHTが作りたいのは、このような経済圏です。ヘルスケアや介護、保険、美容といった様々な分野のデータを集め、最終的にデータビジネスを展開したいと考えています。

三好(NDV):
 ドコモやNTTグループは、長期的には、ユーザーのパーソナルエージェントになることを目指しています。そのために個人のデータが必要なのは火を見るより明らか。とはいえ、ドコモがすべてを保有できるわけではないので、データを抱えているプレイヤーとタッグを組まなければなりません。この文脈の中で、PHTが抱えている個人の健康データは、非常に価値があるものだと考えています。

 例えばPHTと病院とドコモがタッグを組んで、健康診断などのデータをAIで分析すれば、病気の予測ができる未来を実現できるかもしれません。そんなに遠い未来ではなく、割と近くにある未来だと想像しています。

新田(PHT):
 そういった未来図は、PHTとしても初期から描いていたものです。しかし自社の強みを考えれば、必ずしも自分たちでAIを開発する必要はありません。むしろNTTグループとタッグを組んだほうが、世間からは信用される可能性が高いとすら言えるでしょう。

── ドコモ・NTTグループ以外との連携可能性もありそうです。

新田(PHT):
 健康データを使って他社と取り組めることはたくさんあると認識していますし、実際色々な提案をいただいています。

 例えばPHTの株主には、全国展開するメガネブランド事業に関連する会社がいますが、メガネと視力健診は切っても切り離せないので、PHTとの相性が良いのは間違いありません。視力は1年でガクッと落ちることもありますし、検診の時しか測らないので、そのタイミングでメガネの見直しを提案することは有効でしょう。

 とはいえ、他社との連携の効果を発揮するためには、もっともっとPHTの成長が必要です。そのため現在は規模の拡大にフォーカスしています。

── 最後に、PHTの今後の成長戦略について聞かせてください。

新田(PHT):
 繰り返しになりますが、PHTはこれまで戦略的に、優先して企業・従業員を集め、健康データ管理に注力してきました。現在は、次のフェーズである「分析と対策」へと移行しており、特にアフターフォローサービスの充実に注力しています。具体的には、一次検診後の二次検診の斡旋(あっせん)や、保健師による保健指導といったサービスの強化です。次の1年はこういったエリアに注力し、事業単価と顧客満足度の向上の両立を目指しています。

 また、これまでは大企業をメインにサービスを提供してきましたが、2025年12月から中小企業向けのサービスも新たに開始する予定です。日本の企業約382万社のうち、99.7%にあたる約381万社が中小企業ですが、競合他社のほとんどはこの市場を狙っていません。PHTはこの99%以上の市場でもトップシェアを取ることで、実質的な業界トップを狙います。

 この中小企業市場への参入の追い風となっているのが、労働安全衛生法の改正です。従来は義務ではなかった50人以下の職場におけるストレスチェックが、法律によって義務化されました。2025年12月以降、すべての事業者が年に1回、従業員のストレスチェックを実施しなければなりません。PHTのシステムはアプリでストレスチェックと健康管理の両方に対応できるため、この法改正を背景に、該当する市場を一気に獲得していくつもりです。

 例えば、紙で送られてきた検査結果を写真に撮ると、OCRでデータ化して、けんさぽに登録できるようになる機能を実装していきます。名刺管理アプリのような機能ですね。これはおそらく業界初の機能になると思います。我々が裏側でデータ入力をする必要もないので、コストも大幅に下がるはずで、中小企業にも簡単に導入いただけるようになるはずです。

三好(NDV):
 中小企業にも大企業にもけんさぽが導入されれば、ドコモ・NTTグループとの共創できる範囲も広がります。頑張っていきましょう。応援しています。

── 新田さん、三好さん、本日はありがとうございました。

(執筆:pilot boat 納富 隼平、撮影:ソネカワアキコ)

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