東南アジアのスタートアップとNTTの協業を加速する。Synexia Venturesが目指す、オープンイノベーションを推進する「適切な仕組み」とは|Synexia Ventures ✕ NTTドコモ・ベンチャーズ | 株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ

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2026.02.02

東南アジアのスタートアップとNTTの協業を加速する。Synexia Venturesが目指す、オープンイノベーションを推進する「適切な仕組み」とは|Synexia Ventures ✕ NTTドコモ・ベンチャーズ

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 株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ(以下「NDV」)とNTTファイナンス株式会社は、東南アジアのスタートアップとの連携強化を目的としたCVCである「Synexia Ventures(シネクシア ベンチャーズ)」を2025年12月に設立しました。

 Synexia Venturesの概要や設立目的、今後の活動方針などについて、Synexia VenturesのKuanさん、NTTの杵渕さん、NDVの小竹の3名に聞きました。

(左から)杵渕さん、Kuanさん、小竹

東南アジアスタートアップとNTTの協業を生む

── Synexia Venturesの概要を教えてください。

Kuan(Synexia):
 「Synexia」は、「Synergy」と「Asia」をかけ合わせた造語です。NTTグループと共創する東南アジアのスタートアップをソーシングし、アジアにおける新たなシナジーとビジネスを生み出すために設立しました。

 Synexia Venturesの代表は私が務めますが、NDVの小竹さんにも協力していただきながら運営し、NTTの杵渕さんとも連携していきます。

Kuan Hsu
Synexia Ventures ファンドマネジャー / KK Fund 代表取締役

米国マッキンゼーにて経営コンサルティング業務に従事した後、米国および中国において、電子機器受託製造サービス(EMS)プロバイダーであるSolectron社にてサプライチェーンマネジメント業務に携わる。
ペンシルベニア大学ウォートン校にてMBAおよびMAの学位を取得後、米国ゴールドマン・サックスにて投資銀行業務に従事し、テクノロジー、メディア、通信(TMT)分野のM&A案件を担当。
その後、シンガポールのテマセク(シンガポール政府系投資会社)において東南アジア地域のプライベートエクイティ投資を担当した後、グリーベンチャーズ(現STRIVE)にて東南アジア地域のベンチャー投資業務を統括。
現在は、シンガポールを拠点に、東南アジア、香港、台湾のインターネットおよびモバイル関連のアーリーステージ投資に特化するKK Fundを設立し、同ファンドのジェネラルパートナーを務めている。

小竹(NDV):
 Synexia Venturesは、東南アジアの有望なスタートアップとNTTグループとの連携強化を目的とした投資ファンドを運営するコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)です。

 ファンドの運用総額は1,000万米ドル(約15億円)で、NTTファイナンスとNTTドコモ・ベンチャーズが同額を出資しています。規模は大きくないものの、2~3年程度で機動的に組み入れていく想定です。その成果を見極めながら、更なる取り組みの拡大も考えていきます。

 また、将来的にSynexia Venturesから投資したスタートアップが更なる資金調達をする場合には、協業の成熟度を勘案しながら、NDVまたはNTTグループ各社からより大きな金額の出資も検討していきます。

 投資領域としては現在NTTグループが注力している領域が中心です。具体的にはAIやIoT、スマートシティ、ロボティクス、ドローン、アグリなどですね。ただ、今後の市場環境次第で注力領域が変われば、投資エリアも変動していく可能性はあります。

小竹 有馬 | KOTAKE Yuma
株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ Investment & Business Development Director

2023年7月よりNTTドコモ・ベンチャーズに参画。AI、ロボティクス、Web 3、SaaSなど幅広い投資を担当。2024年からは東南アジア投資プロジェクトを立ち上げ、NTT初の海外におけるスタートアップ協業推進プログラム「NTT Startup Challenge」を伴走。もっか、Singlishの習得を目指している。
趣味はTM NETWORKとヘビーメタル。及び四天王プロレス
ペンシルバニア大学ロースクールLL.M. class of 2014
Wharton Business & Law Certificate, 2014

── Synexia Venturesを立ち上げたきっかけを教えてください。

杵渕(NTT):
 Synexia Venturesを設立する契機になったのは、NTT Startup Challengeです。これは東南アジアのスタートアップとNTTグループ協業推進プログラムで、前身であるNTT Com Startup Challengeは2017年から運営しています。これまでに累計5,200のスタートアップからご応募いただきました。

 2025年はNTTグループから15社が参加し、東南アジア、台湾、香港、韓国のスタートアップ約1,200社からご応募いただいています。そこから最終的に、NTTグループとの協業可能性の高い10社が書類審査などを通過し、ピッチの舞台に立ちました。上位入賞者とは、前向きにNTTグループとの協業を検討しているところです。ピッチ外でもスタートアップとNTTグループ各社のマッチングを実施しており、今回は50件ほどの商談が生まれました。

杵渕 保敬 | KINEBUCHI Yasunori
NTT株式会社 グローバルビジネス部門 担当部長

2006年NTTコミュニケーションズ入社。法人営業部等を経て2016年から2020年まで東南アジアスタートアップ協業施策である”NTT Com Startup Challenge”主宰。2019年からNTT Singapore勤務, 2022年からNTT UK勤務を経て2023年からNTT(持株会社)グローバルビジネス部門所属。現在、グループ共同でのオープンイノベーション施策である”NTT Startup Challenge”責任者。ノースカロライナ大学MBA Class of 2015.

杵渕(NTT):
 Synexia VenturesはNTT Startup Challengeとも連携していく予定です。特に上位3社となったスタートアップには、優先的に出資を検討していきます。

Kuan(Synexia):
 Synexia Venturesは、東南アジアのシード・アーリー期のスタートアップにリスクマネーを提供し、関係性を築き、NTTグループとの共創を生んでいきます。

 また必要に応じて、NDVまたは事業会社からスタートアップに、より大きな資金を投資するケースもあるでしょう。その中からNTTグループにとって意味のある新規事業が生まれた際には、そのスタートアップをNTTグループがM&Aすることも視野に入れています。

小竹(NDV):
 NTTグループの海外売上比率は23%ほどで、海外の成長余力はまだまだ残されています。では海外でどのようにNTTの事業を広げていくのかを考えると、データセンターなど既存事業の成長だけではなく、事業ポートフォリオの拡大していく必要があるのは間違いありません。その手段として、現地企業とのオープンイノベーションは重要です。ただ、そのためにはいくつかの課題がNTTグループ側にもあると認識しています。

 まずは大企業とスタートアップの違いを十分理解していないこと。意思決定のスピードの違いはもちろん、売上規模についての期待値のズレもしばしば課題となります。例えば我々のような大企業がオープンイノベーションを行う場合、数億円〜数十億円の売上をすぐに期待するケースは少なくありません。しかしこれはスタートアップからすると非常に大きな金額です。大きな成果を目指すにしても、長いスパンで一緒に取り組む覚悟が必要でしょう。

 また、海外企業との連携には相応のリスクが伴うため、事業会社としてはモチベーションが湧きにくいという課題もあります。

 Synexia Venturesはこういった状況を改善し、NTTグループの海外オープンイノベーションの着火装置となるようにデザインしました。まずは少額のリスクマネーを我々が投下し、協業のきっかけを作る。それを契機にNTTグループの事業会社と共に現地スタートアップと協業を進めていく。成果が実った場合には、今度はNDVがより大きな金額をフォローオン投資し、さらなるシナジー創出を図る。ビジネスインパクトを生むに至ったら、最終的にはNTTグループがM&Aをするというのも選択肢のひとつです。

東南アジアのスタートアップは、日本との連携に前向き

── ファンドマネジャーを務めるのは、Kuanさんですね。

Kuan(Synexia):
 私は以前、グリーベンチャーズ(現「STRIVE」)で東南アジアの代表を務めていました。当時の投資先の数多くはIPOやM&Aを果たし、その中にはインドネシアでIPOを果たしたユニコーン企業も含まれています。この経験を経て立ち上げたのが「KK Fund」です。そこから縁あって、Synexia Venturesに参画することになりました。

 なお、KK Fundはファンドの運用期間の終盤に差し掛かっており、新規投資は行っておらず、両社に利益相反の心配はありません。

杵渕(NTT):
 私がNTT Startup Challengeを2017年に立ち上げた際から、Kuanさんにはスピーカーや審査員という形で協力してもらっていたんです。その縁もあり、ファンドマネジャーを依頼しました。

Kuan(Synexia):
 KK Fundでは、NTTほどの規模ではないものの、いくつかの大企業と協業し、彼らの東南アジアにおける戦略立案を支援してきました。しかし、既存のモデルには課題があります。

 「ファンドに多数の企業が出資するモデル」では、特定の1社と深く連携することが困難ですし、「共同GPモデル」では意見の相違から対立が起こるケースも少なくありません。「企業が自社CVCを運営するモデル」もありますが、これにも特有の難しさがある。そんな課題を感じている中でSynexia Venturesの話をいただきました。

Kuan(Synexia):
 私はNTTグループの東南アジアに対する献身的な姿勢を目の当たりにしてきましたし、「グループの外にいながら、中にもいる」というのは非常にユニークです。この構造自体が一種のイノベーションであり、他の大企業ではまず見られない取り組みだと感じています。

── 東南アジアと日本のスタートアップ環境の違いを教えてください。

小竹(NDV):
 日本企業と海外スタートアップの連携事例はNTTグループ内にもたくさんあります。我々もこれまでシリコンバレーやイスラエルで、数多くの投資を実施してきました。ただこれらの事例は、海外の素晴らしい技術やサービスを日本に輸入してNTTのサービスに取り入れるという発想のものが多いんです。

 一方で東南アジアの場合は、NTTのアセットを現地に輸出し、スタートアップが取り組んでいる課題解決に使ってもらう、という逆の発想をしています。

小竹(NDV):
 東南アジアは全域で8億人の人口を有する巨大なマーケットですが、各国で事情は異なります。例えばシンガポールで強いのは、AIなどのテクノロジースタートアップです。

 一方でインドネシアやマレーシア、フィリピンなどは課題解決志向のスタートアップが多く、彼らは「金融アクセスへの格差」「都市部と地方部の格差」といった、東南アジア特有の課題解決に取り組んでいます。例えば、東南アジアではクレジットカードを持てない方が多いため、バーコード決済のようなフィンテックスタートアップが急速に発展しました。そうすると今度は、クレジットカードを持たない層がオンラインで物を買えるようになり、ECサービスを展開するスタートアップが登場します。それに伴い、迅速に正確に物を届ける仕組みが必要になり、物流関連のサービスが普及しました。

 このように東南アジアでは、ある課題を出発点にして、当該課題を解決するスタートアップが登場し、周辺領域でもその動きが加速するという動きを見せており、スタートアップのサービスが社会インフラとなっています。この点が、日本とは大きく異なる特徴ですね。

杵渕(NTT):
 課題を解決するには当然、適切な課題を発見しなくてはなりません。それをいち早く実現してビジネス化し、マネタイズするのが得意なのがスタートアップです。だったらそこはスタートアップに任せ、NTTグループはそのサポートに徹した方が効率が良い。先述したNTT Startup Challengeも、0→1を実現しているスタートアップが1→10、そして10→100をする際のサポートをしたいと思って立ち上げたものです。

小竹(NDV):
 また東南アジアのスタートアップは、日本企業と組むことに非常に前向きですね。純粋に日本をリスペクトしてくれているように感じています。お互いがリスペクトしあえれば、東南アジアで一緒に新しいものを作っていけるはずです。

Kuan(Synexia):
 日本は、世界的にもIPOがしやすい環境にあると言われています。一方で東南アジアは、ユニコーン企業でもIPOが難しい。とすると、東南アジアのスタートアップのExitはM&Aが有力になるわけです。

 この状況こそが、Synexia Venturesが優位性を発揮できるポイントになっていきます。NTTグループは、必要に応じて我々の投資先の買収を検討できるからです。

日本のアセットを活かすのに必要な「適切な仕組み」

── 東南アジアでもNTTグループは存在感を発揮できる可能性は十分にあるということですね。

Kuan(Synexia):
 その通りです。東南アジアは日本企業、特にNTTにとって大きな優位性がある地域だと感じています。なぜなら、我々には確固たるアセットや知的財産があるからです。

 足りないのは、それらを現地に持ち込み、優れたローカルパートナーを見つけて形にするための「適切な仕組み」だけでしょう。とはいえ、単にお金を出すだけだったり、十分な信頼関係なしにいきなりジョイントベンチャーを作ったりしても上手くはいきません。

 その点、Synexia Venturesは、我々自身が「適切な仕組み」となり得る非常に面白い仕組みだと考えています。大企業であっても、適切な仕組みさえ整えられれば、スタートアップを通じて価値を生み出せる。それを証明したいと考えています。これが実現すれば、現地の政府や日本の他の大企業も「これこそがコーポレート・イノベーションの正しいあり方だ」と認識するでしょう。今回の挑戦は、それほどエキサイティングなものなのです。

 Synexia Venturesから、東南アジアのスタートアップとNTTグループ、ひいては日本との新たな共創を作っていきたいと考えています。

── Kuanさん、杵渕さん、小竹さん、本日はありがとうございました。

(執筆:pilot boat 納富 隼平、撮影:ソネカワアキコ)

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