笹原優子がCEO&CCO、安元淳がCOOの二人体制に イノベーション創出に向けさらなる高みをめざすNTTドコモ・ベンチャーズへ

株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ(以下「NDV」)は2025年7月1日、新たな経営体制を発表。これに伴い、笹原優子が代表取締役社長(CEO・CCO)に、前代表取締役社長の安元淳は代表取締役(COO)に就任しました。
今回の新体制の狙いはどこにあるのでしょうか。笹原がCEOだけでなくCCOも名乗る意図は。スタートアップをはじめとした関係者に影響はあるのか。就任したばかりの二人に聞きました。

「摩擦で生まれるエネルギー」が新しい価値を生む
── 2025年7月からの新体制について教えてください。
笹原:
2025年7月に新たな経営体制がスタートし、私、笹原が代表取締役CEO&CCO(Chief Culture Officer)に就任しています。
私は安元さんの前の代表でもあり、NDVからNTTドコモに移った後も引き続きNDVの取締役の一人として関与はしていたものの、2年ぶりに代表取締役として復帰することになりました。今後はCEO&CCOとして再びNDVの経営に携わっていきます。

安元:
NTTドコモグループは現在、新たな成長に向けて様々な動きを加速させているところです。その中にはオープンイノベーションや新規事業創出も含まれていて、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)であるNDVは、NTTドコモグループはもちろん、NTTグループ全体をリードしなければならない立場にあります。今回の新体制の主目的は、そのCVCとしての体制強化。二人代表となり、オープンイノベーションや新規事業創出をパワフルにリードしていくつもりです。

安元:
二人代表になる前提として、私と笹原さんでは得意分野が異なるんです。笹原さんの強みは文化形成やオープンイノベーションのための関係づくり。私の強みはスタートアップ投資だと考えています。両者が代表取締役として補完し合うことで、より一層オープンイノベーションなどを牽引できるようになるでしょう。
笹原:
私は以前NDVの代表を務めていた際、NTTドコモやNTTグループの経営幹部と会話してファンドを組成したり、オープンイノベーションに取り組んだりしてきました。そのため今でもこういったコミュニケーション関連は得意分野です。
とはいえ当時は投資経験があったわけではないので、代表として不安があったのは事実。それもあって2年前の人事異動で私がNDVからNTTドコモに移る際、投資に強みをもつ安元さんが代表となり、本当は「2人でやれたらいいのにな」とは思っていたんです。今回の体制で、2年越しにその願いが叶いました。
── 代表取締役ニ人体制となりますが、どのように経営していくのか、教えてください。
笹原:
よく知った仲なので、お互い様子を窺うようなことはありません。一方で、イノベーションを起こすための「健全な衝突」は必要だと思っています。
NDVのValue(行動指針)の一つに「摩擦で生まれるエネルギーを推進力に。」というものがあります。私はこれが好きなんです。多様性や衝突があるからこそ、何か新しいアイディアが生まれる。安元さんとは、喧嘩するくらいがちょうどいいと思っています。

安元:
私も健全な喧嘩は必要だと考えています。自分達を守るためではなく、スタートアップの皆さんのため、NTTドコモ・NTTグループの発展のために必要な喧嘩なら、なんら問題ありませんね。笹原さんの言う通り、むしろそこからは新しい価値が生まれるはずです。
笹原:
私がオープンイノベーションの文脈でコメントして、安元さんが投資の観点から反論して......というループを経て、新しい価値を生んでいきたいですね。
大きな渦を作るために必要な「カルチャー」
── 笹原さんはCEOだけでなく、CCOも名乗っています。
笹原:
CCOと聞くと、真ん中のCには「クリエーション」や「コミュニケーション」など、いくつか単語が思い浮かびますよね。これらも好きな言葉ですし、そうした領域もリードしていきたいと思っています。
でも私が最も好きだし得意なのは「カルチャー作り」です。大きな会社にいる人全員が同じ方向を向いて動けたら大きな渦ができて、大きなことを成し遂げられる。それが社会のインパクトにも繋がります。もちろん色々な調整は大変ですが、それを上手くコーディネートできると、組織として高いパフォーマンスが発揮できる。そのために必要なのがカルチャーです。こういった考えを社内外に表明するため、「Chief Culture Officer」を表すCCOを役割に加えました。

笹原:
以前NDVにいたときにも、ミッションやビジョン、バリューを社内のみんなと一緒に作り、こういった活動が組織の推進力になるんだと改めて実感したんです。私はかねてより、イノベーションには「オープン」「フラット」「ダイバーシティ」の3つの要素が必要だと考えており、これまで率いてきたチームでもいつもこれを掲げてきました。NDVでも引き続きこれらを大切にし、NTTドコモやNTTグループ、ひいてはスタートアップやエコシステムまで波及するカルチャー作りを担っていくつもりです。NDV社内外、NTTグループ内外、業界内外に囚われることなく、中と外となく平たく世の中をポジティブに繋いでいきたいですね。
「ワクワクし、ワクワクさせる」NDVへ
── 新たな経営体制となり、投資方針の変更などはありますか?
安元:
数年前までは、オープンイノベーションに取り組みやすいということもあり、NDVの投資先にはBtoBの事業を営んでいるスタートアップが多かったんです。しかし当然ながらNTTドコモはtoCの事業も運営している会社であり、近年はエンターテイメントやスポーツ、その関連分野へも注力してきました。それもありNDVでは近年、こういった分野への投資を増やしてきました。新たな経営体制になっても、BtoC、BtoCの両面でNTTドコモ・NTTグループとの「共創」に繋がる分野に投資をするという大きな流れ自体に変更はありません。
NTTドコモは現在「金融・決済」「マーケティングソリューション」「エンターテイメント」「イエナカ」「アフターマーケット」などの事業領域に注力しており、NDVとしてもこれらに伴走できるスタートアップへは重点的に投資していきたいと考えています。
加えて、笹原さんが戻ってきたことを受けて、今後は足元の協業を作る投資はもちろん、将来のイノベーションを生み出す飛び地の領域にも投資範囲を拡大していきたいと考えているんです。
笹原:
そうですね。既存領域への投資は引き続き行いつつ、私の強みを活かして、先行技術への投資や、ちょっと先の未来の探索領域の発掘とスタートアップ投資の組み合わせにも取り組んでいきたいです。
またNDVは普段から未来を創っているスタートアップとの接点があるので、未来を語れる人材が揃っているはず。「こういう未来であってほしい」「ユーザーはこういう使い方を望んでいるのではないか」といった先読みしたシナリオや事業を描き、NTTドコモ・NTTグループと対話できる人材を育成していきたいですね。
安元:
確かに、自ら仮説をもって、足りていない部分をパートナーとしてのスタートアップに埋めてもらい、自分たちで新しい事業部や会社を作る気概のある人材は必要だと思います。そうした人材の発掘・育成はまさに笹原さんの得意分野なので、私も期待しています。
── 今回の体制変更について、スタートアップの皆さんへの影響はありますか?
安元:
スタートアップの皆さんと日々接しているのは、笹原さんや私だけでなく基本的にはNDVのメンバーですし、大きな影響はないはずです。
もしかしたら「そんなに大きな組織でもないのに二人代表になって、意思決定が遅くなったりするのではないか」なんて心配もあるかもしれません。もちろん大きな意思決定などで笹原さんに相談しながら進めることはありますが、それが原因で組織のスピードが遅くなっては本末転倒です。従来通りにスピーディーに進めていくつもりですのでご安心ください。
累計で200社にのぼる既存投資先の皆さまも、これから新たに出会うスタートアップの皆さまも、その他VC・CVCの皆さまも、変わらずお付き合いいただけると嬉しいです。

安元:
また、笹原さんは2年前までNDVの代表だったので、既にご存知の方も多いと思います。ゼロから業界に入ってきた人であれば人脈作りが大変だと思いますが、笹原さんは既に大きな人脈をもっている。そういう意味でも関係者への負担はないはずですし、むしろスタートアップの皆さんには、相談先が増えたとポジティブに捉えてほしいですね。
── 最後に、スタートアップや関係者の皆さんにメッセージをお願いします。
安元:
このたび、笹原さんを改めて代表に迎え入れ、二人の代表取締役が互いの強みを活かしつつ、スタートアップの皆さんをより強力に支えていく体制を整えました。NTTドコモ・NTTグループと一緒に新しい価値を生み出したいスタートアップの皆さん、NDVを是非使い倒してください。
笹原:
ワクワクし、ワクワクさせる。これも私が好きなNDVのValueの一つです。自分たちがワクワクしていないと、人をワクワクさせることはできません。我々自身がワクワクしつつ、周りをワクワクさせ、一緒に新しいものを作っていきたいと考えています。今後ともNDVをよろしくお願いします。

(執筆:pilot boat 納富 隼平、撮影:ソネカワアキコ)