Z・α世代向けや音声AIサービスが登場。NTTドコモ・ベンチャーズ支援先スタートアップ7社のピッチ|NTT DOCOMO VENTURES DAY 2026レポート②

株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ(以下「NDV」)は、2026年2月19日、東京・大手町にてNTT DOCOMO VENTURES DAY 2026を開催しました。
本イベントは、NDVが支援する国内外の注目スタートアップ企業やNTTグループ各社が一堂に会する催しです。スタートアップ企業とNTTグループをマッチングし、共創のきっかけを創出することを目的として毎年開催しており、今回が10回目の開催となっています。
本記事では、NDVの国内外7社の支援先スタートアップによるピッチセッションの様子をお届け。Z・α世代に人気の位置情報共有SNSやテキスト通話アプリ、契約書レビュー、文系セキュリティ、中高生向け探索スクール、AI音声プラットフォーム、ステーブルコイン・サービスなどが登壇しました。
また、支援先とNTTグループによるブース出展の様子や、シリコンバレーで注目を集める動画生成AIスタートアップHiggsfieldとの対談の様子もお届けします。
NDV支援先7社によるピッチ
■Z世代に人気の位置情報共有アプリ「whoo」
株式会社LinQが提供するのは、友達や家族とリアルタイムで位置情報を共有するアプリ「whoo」。グローバルで累計3,000万ダウンロードを突破している、Z世代に人気のアプリです。NTT DOCOMO VENTURES DAY 2026を開催した当日にNDVからの出資が発表されました。
「遊びに行ってもいいかな」と思ったときに友達が家にいるのか確認する、「ランチに行きたいな」と思った際に大学内に友人がいるのかを確認する、塾から帰るときに親子や家族でコミュニケーションを取ったりする、といった使い方が想定されています。
ドコモとは、いくつかの協業プランを検討中。例えば、dポイント加盟店とwhooのスポット広告のかけ合わせです。whooのマップ上に加盟店を目立たせる形で表示し、位置情報をベースとした広告の収益化を狙います。近くのdポイント加盟店をwhoo上に表示することも可能でしょう。ドコモIDと連携させたり、日常的に使われているwhooとドコモが日常的な接点を設けたりすることで、特に「友達と一緒に何かをするという点ではwhooが役立てると思う」と、LinQ代表の原田豪介さんは語ります。

■テキスト通話アプリ「Jiffcy」
声を出さずに通話できるテキスト通話アプリ「Jiffcy」を提供するのは、株式会社Jiffcy。若い世代の女性を中心に利用者を伸ばしています。
Jiffcyの使い方は次の通り。相手を選び、テキスト通話ボタンをタップし、相手に通知を送ります。相手が応答すると、トーク画面に遷移。トーク画面は、相手が入力した内容が一文字ずつ表示される仕組みとなっており、タイピング途中でも相手の言いたいことが分かったり、相手がタイピングしている途中に相槌を返したりできるようになり、まさに「テキストで通話」しているような体験が実現します。
Jiffcyの特徴は、LINEや電話よりも連続トーク時間が長くなる点。応答率は電話よりも高くなっています。その理由は、音声通話より対応できる場面が多いから。電話は例えば、電車に乗っているときには出られませんし、自宅で家族といるときには対応できないこともあるでしょう。一方でJiffcyなら、そんな場合でも対応可能です。LINEではすぐ返事が来ないこともありますが、一方電話だと負荷が大きい。そんなシーンにもJiffcyはピッタリです。難聴者向けとしても役立つでしょうし、避難所などでの活躍も期待されます。

Jiffcy社のインタビュー記事はこちらから。
Z・α世代に響く新たなコミュニケーション。テキスト通話アプリ「Jiffcy」の可能性|Jiffcy ✕ NTTドコモ・ベンチャーズ
■AI契約書レビューサービス「LeCHECK(リチェック)」
株式会社リセが提供するのは、AI契約書レビューサービス「LeCHECK(リチェック)」です。同社代表の藤田氏は、会社を設立するまで18年ほど大手国際法律事務所に勤務し、企業間紛争や国際紛争の担当をしていました。数多くの紛争案件に携わる中で、そもそも契約の段階でリスクを防げていれば争いは避けられたのではないか、という問題意識を持つように。特に中堅・中小企業は費用面などから、契約書のすべてを弁護士に確認してもらうのが難しい状況にあります。そこで開発したのがLeCHECKです。
LeCHECKは、相手方から受領した契約書をアップロードすると、AIが内容を解析して、修正点を提示。修正のための参考文例も表示します。契約書に潜むリスクについて、専門知識がなくても理解しやすい解説文と参考条文例を提示するのが特徴です。代表の藤田氏をはじめとする30名以上の専門弁護士の知見をもとに設計された高精度AIを搭載している点が強みとなっています。
LeCHECKの累計導入企業数は5,000社を突破。NTTグループ内でも活用されています。

リセ社のインタビュー記事はこちらから。
中堅・中小企業の法務アクセス格差を解消するAI契約書レビューサービス「LeCHECK」。販売や生成AIでNTTグループと共創へ|リセ ✕ NTTドコモ・ベンチャーズ
■「文系のセキュリティ」市場を創るSaaS「SecureNavi」
続いての登壇企業は、SecureNavi株式会社。情報セキュリティ認証や規制、ガイドラインへの準拠、規程の整備・運用、監査や審査など「文系のセキュリティ」領域をDX・高度化するソリューション「SecureNavi」などを開発しています。
セキュリティ関連のイベントや展示会で紹介されるサービスのほとんどは、最先端のテクノロジーを駆使した「理系」のソリューションです。ただし企業のセキュリティ現場には、ガイドラインへの準拠や規程の整備といった「文系」的な仕事も少なくありません。また理系のセキュリティはテクノロジーで自動化されてきている一方で、文系のセキュリティ領域は、20年前から大きく変わっていないのが現状です。このギャップは「文系のセキュリティ市場がないから」だと、SecureNavi社代表の井崎さんは語ります。
この課題を解決すべく同社は、4つのSaaSを提供。ピッチで紹介された「SecureNavi」は、企業がセキュリティの国際基準であるISO/IEC 27001に準拠するためのサービスです。例えば「社内のセキュリティ体制を作る」というミッションにおいて、通常であればWordやExcelで社内の体制図を作るところから始めますが、SecureNaviにはテンプレートが用意されているので、必要な情報を穴埋めしていくだけで体制図の作成が完了します。
SecureNaviは国内1,200社に導入済み。今後はAI機能の実装にも取り組み「文系のセキュリティ」というカテゴリを創出していきます。

SecureNavi社のインタビュー記事はこちらから。
Word・Excel依存からの脱却。SecureNaviとNTTグループが創る、日本発「文系のセキュリティ」市場|SecureNavi ✕ NTTドコモ・ベンチャーズ
■探究特化のスクールTANQ BASE / HR高等学院
NTTドコモの社内新規事業からスピンアウトし、キャリア探究スクールTANQ BASEやHR高等学院を運営するのは株式会社RePlayce。
日本の子供の学力は世界でもトップクラスと言われますが、自信や自己効力感、自律性は、決して高くありません。受験現場も変わってきており、一般受験の割合は既に過半数を割り込み、だんだんと推薦入試へ移行しています。既存の教育に疑問をもつ方も増え、ポジティブに通信制高校を選ぶ学生も増えているそうです。主体的に活動しないと大学に入れないというアメリカ型の受験にシフトしているものの、担任以外に進路相談をする高校生は2%しかいないというデータも存在しています。大人との接点が少ないため、やりたいことの発見に苦労する学生は多いようです。
RePlayceが提供するTANQ BASEは、自律を身につけるためにキャリアロールモデルやスモールステップ、コミュニティの力を活用する教育システムです。また同社は、通信制サポート校「HR高等学院」も、自治体や学校、企業とも連携しながら運営しています。特徴は、3年間で1,000回以上PDCAを回して教材を改善してきた点と、学生たちが楽しいと思える教材、そして社会人講師です。
NTT DOCOMO VENTURES DAY当日には、Z世代・α世代と企業が対話し、試し、考え、つくり直す共創型リビングラボ「Z・α世代共創研究所」のプレスリリースをNDVと共同で発表しました。NDVは本研究所の共創パートナーとして、若年層と企業の共創機会を広げていきます。

■音声AIサービス「ElevenLabs」
ElevenLabs(以下「イレブンラボ」)は高品質な音声AIを提供する、英国発のスタートアップです。サウンド、ボイス、ミュージックといった「音」を核にしたAIエージェントを提供し、カスタマーサポートや業務自動化を実現。創業からまだ4年足らずにもかかわらず、既にFortune 500企業の75%以上を含む数千の企業、5,000万人以上のユーザーを獲得しています。2026年2月にはSequoia CapitalやAndreessen Horowitzといった世界を代表するベンチャーキャピタルが参加した、5億ドル(約780億円)のシリーズD資金調達を発表し、話題となりました。
イレブンラボはText to SpeechやAI吹き替え、ボイスクローニングなど、音声AIに関する9つのプロダクトを提供。AI吹き替えでは、元の話し声のスタイルや抑揚をそのまま維持しながら、言語だけを32言語に変換してくれます。イベント当日は、ある日本のテレビ番組を、イレブンラボのAIシステムを用いて、自動で英語・スペイン語に吹き替えたサンプルをオーディエンスに示しました。
業界で初めてライセンスを取得し、著作権の問題を解決した音楽生成サービスの提供も開始。サルバドール・ダリ美術館では、ダリ本人の声をクローニングし、来場者に対してダリのクローンボイスが対話形式で美術作品を説明してくれるシステムを提供しています。

■ステーブルコインサービス基盤を提供する「Bastion」
規制に準拠したステーブルコインサービス基盤を提供するのはBastion。
Bastionは金融機関を含めたあらゆる大企業が、自社のプラットフォーム上でステーブルコインを提供することを可能にし、金融サービスを提供できるようにします。その特徴は3つ。まずは企業がコンプライアンスを遵守した上で、ステーブルコインを発行できるようになること。2つ目に、カストディ型ウォレット(ステーブルコインの秘密鍵を、企業側が管理する仕組み)。最後に、現地通貨とステーブルコインの変換です。
Bastionは既にソニー銀行にもサービスを提供。同行は、ソニーグループ各社の北米での事業展開を金融面から支援する構想のもと、Bastionが提供するステーブルコインの発行・償還インフラを活用し、米国における米ドル建てステーブルコインの事業化に向けた具体的な検討を進めることで、新たな金融体験の創造を目指しています。

NDV支援先+NTTグループによるブース出展
NTT DOCOMO VENTURES DAY 2026では、NDVの支援先であるスタートアップ20社と、スタートアップとの共創を仕掛けるNTTグループ8事業部によるブース出展も実施。オープンからクローズまで、終始盛況でした。この場が新たな共創のきっかけになることを願っています。



シリコンバレーの生成AI最新事情
この日最後のセッションとして開催されたのは「Silicon Valley AI Outlook」です。シリコンバレー発の動画生成AIスタートアップであるHiggsfieldに、AIの最新動向を伺いました。登壇していただいたのは以下の方々です。
・Higgsfield, Inc. Co-Founder & Chief Strategy Officer Mahi de Silva (Mahi)
・株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ Managing Director Christopher Hermanowicz (Chris)

以下では、英語セッションの内容を日本語に翻訳し、ダイジェストで紹介します。
■広告や映画にも活用できる動画生成AI
Chris(NDV):
本日最後のセッションにご参加いただきありがとうございます。このセッションではHiggsfieldのMahiさんという特別なゲストをお招きして、「Silicon Valley AI Outlook」をテーマにお話を聞いていきます。
Mahi(Higgsfield):
ご紹介ありがとうございます。Higgsfieldはシリコンバレーで創業した、まだまだ若いスタートアップです。
Higgsfieldが開発しているのは、高度な専門知識や機材を必要とせずに、プロレベルの動画や広告を制作できるオールインワン動画生成AIプラットフォームです。テキストや画像はもちろん、まるで映画のような動画を作成できます。独自の画像・動画生成モデルに加え、OpenAIのSoraやGoogleのVeoなど世界中の主要モデルを統合したオーケストレーション基盤として機能している点も特徴です。
Higgsfieldが展開するサービスを使えば、誰でもマーケティングや広告制作におけるワークフローを効率化し、短時間で高品質な映像作品を制作できるようになるでしょう。
最近リリースしたCinema Studioでは、スケッチや画像から動画を生成する機能が備えられており、従来の映画制作のようにカメラワークや照明を細かく制御できます。
Chris(NDV):
Higgsfieldは2025年にブレイクスルーした、最もエキサイティングなAI企業の一つですね。同社が制作した広告やコンテンツを見ない日はありません。今日はブース出展もしてくれていて、そこでも動画を見られるのですが、ブースに立ち寄った多くの人々が、その品質に驚いていました。
Mahi(Higgsfield):
まだノイズはありますし、品質を改善する余地はあります。それでも既に90%以上の精度で、実際に撮影された動画と、私たちのプラットフォームから出力した動画は判別できないほどになってきました。間もなく、誰も違いを見分けられなくなるでしょう。
Chris(NDV):
多くの人が「Higgsfieldは映画でも使えるか?」と気にしています。
Mahi(Higgsfield):
スヌープ・ドッグやマドンナはHiggsfieldを使って、ショート動画を作成しました。また映画制作者は既に、例えば再撮影のために利用しています。これにより、監督が最終カットを気に入らなかったからといって、俳優をロケ地に呼び戻すために数百万ドルを費やす必要はなくなるでしょう。今後GPUがより強力になり、8Kのような高解像度にも対応できるようになれば、映画業界にはさらに貢献できるはずです。

Chris(NDV):
生成AIにつきものの知的財産については、どのような対応をしていますか?
Mahi(Higgsfield):
AI技術の提供者として、権利保持者は尊重しなければなりません。Higgsfieldはテクノロジー企業としての本分を守り、知的財産の所有はしないようにしています。ディズニーなどのIPに関する主張は解決しようとしていますし、プラットフォームが知的財産を不正に流用した場合、利用者の責任を問う仕組みを整えようともしています。
例えば、知的財産をもつ企業顧客は「学習禁止条項」を利用できるようにすることですね。つまり、私たちが学んだものはすべて、元の知的財産を所有していた団体が所有するということです。クリエイターが制作した新しいコンテンツに関する知的財産はすべてクリエイターが所有し、私たちは何の権利ももたないように設計しています。
Chris(NDV):
エージェンシーやブランドへの影響について、もう少し詳しく聞かせてください。
Mahi(Higgsfield):
これまで、高品質な広告クリエイティブを作ろうとすれば、数百万円規模の高額な費用が必要でした。異なるターゲットオーディエンスやセグメント、メディアに合わせてカスタマイズしようとすれば、さらに多くのコストがかかりますが、生成AIはこの状況を完全に変えました。非常に高品質な広告クリエイティブを、数万円で作れるのです。
Chris(NDV):
将来的にはモデルがコモディティ化し計算コストが下がると、多くの人が主張しています。それに応じてHiggsfieldの価格も下がりそうでしょうか。
Mahi(Higgsfield):
そうしたいと思っています。あらゆる技術革新はコストを圧縮し、その果実は消費者にも還元されるべきです。価格だけでなく、今なら数十秒、数分かかる動画の生成も、10年も経てば一瞬でできるようになるというメリットも生まれるでしょう。
Chris(NDV):
Higgsfieldは、ショート動画業界において、FigmaやCanvaのような存在になりつつあると思っています。M&Aの打診もあるのではないでしょうか。
Mahi(Higgsfield):
M&Aへの関心は常にあるようです。ただここで考えるべきは「どうすれば私たちの顧客に最も貢献できるか」でしょう。Higgsfieldの経営陣は、M&Aではなく、IPOを目指しながら「多くのクリエイターにコンテンツ制作ツールを民主化する」というコミットメントを果たせると信じています。
この会場にも、まだHiggsfieldを十分に試していない人が多くいると思います。私たちのプラットフォームでは誰でも2回、無料で生成できますので、ぜひ試してみてください。いかに簡単に使えるかに驚くと思います。一度試してもらえば、きっと夢中になるはずです。
Chris(NDV):
ぜひ試してみてください。Mahiさん、ありがとうございました。本イベントの締めくくりとして素晴らしい内容でした。

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次の記事では、ugo株式会社とNTT西日本、パラレル株式会社とNTTドコモの組み合わせで実現した共創事例をお届けします。NTTドコモの前田社長や、NDVのCEO笹原・COO安元がオープンイノベーションについて語ったセッションの様子はこちらから。
(執筆:pilot boat 納富 隼平、撮影:ソネカワアキコ)
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