KLab真田氏がアプリ開発現場に復帰。web3・AIプロダクト第一弾はクイズ動画SNS「QAQA」 | ブロックスミス ✕ NTTドコモ・ベンチャーズ
2024年、株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ(以下「NDV」)は、ブロックチェーンゲームやweb3サービスを手掛ける株式会社BLOCKSMITH&Co.(以下「ブロックスミス」)への出資を発表しました。
ブロックスミスが開発する「QAQA(カカ)」は、ユーザー投稿型の縦型ショート動画クイズアプリ。ユーザーはクイズを出題したり解答者として正解したりすることでゲーム内通貨「CHIP(チップ)」を貯めることができ、CHIPは暗号資産「BLOS(ブロックス)」に交換できます。そんなQAQAを開発するKLab株式会社取締役会長兼ブロックスミス代表の真田さんは、十数年ぶりにアプリ開発の現場に復帰したそうです。
なぜ真田さんはアプリ開発の先頭に戻ったのか、QAQAはどんなサービスなのか、この先の展開はどう考えているのか、NTTグループとの共創内容は。ブロックスミス代表の真田さんと、NDVの投資担当である三好大介にインタビューしました。
QAQAはweb3とUGCを採用したクイズアプリ
── ブロックスミスの事業内容を教えてください。
真田(ブロックスミス):
ブロックスミスはゲームスタジオとしてゲームを開発したり、後述する自社サービスのQAQAを開発したりしています。ちなみにブロックチェーンゲーム『キャプテン翼 -RIVALS-』はブロックスミスが開発し、同じくNDVが投資している株式会社Mint Townに提供したものです。
真田(ブロックスミス):
自社サービス第一弾となるQAQAは「愛でトークンを勝ち取れ」をキャッチコピーに掲げた、ユーザー投稿型の縦型ショート動画クイズアプリです。ユーザーはクイズを出題したりクイズに正解したりすることでゲーム内通貨「CHIP」を貯められます。貯まったCHIPは暗号資産「BLQS」に交換可能。つまりQAQAでは、ユーザーはクイズを解いて暗号資産を手に入れられるのです。
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真田(ブロックスミス):
QAQAはUGC(ユーザー生成コンテンツ)を採用しているため、クイズを出題するのは運営ではなくユーザーです。例えばインフルエンサーやブロガー、YouTuber、アニメIPを保有する会社やスポーツチーム、企業などによるクイズ作成を想定しています。クイズを作るというのは意外に大変なので、自社のコンテンツ資産からクイズ制作を支援する「AI Quiz Generator」も開発中です。
クイズ出題者や解答者へは、広告費の分配を計画しています。広告費はBLQSで支払わないといけないので、企業が広告出稿するためには、BLQSを購入しなくてはなりません。広告費として支払われたBLQSはCHIPを経由してクイズ出題者や解答者に分配され、永久に循環する仕組みとなっています。ちなみに、方針によって暗号資産に投資できないという会社のために、日本円などで購入できる仕組みも用意する予定です。
キーワードは「UGC」と「承認欲求」。SNS要素も加えてコミュニティへ
── QAQAのユーザーにはどのような方が多いのでしょうか。
真田(ブロックスミス):
(インタビューを実施した)2024年6月現在、QAQAはβ版をリリースしています。そのユーザーにアンケートを取ってみたところ、テレビのクイズ番組とは異なる層にQAQAが響く可能性があることが判明しました。クイズのバリエーションとしてはもしかしたら、例えば芸能よりも政治経済の方が受け入れられるかもしれません。現在はスティーブ・ジョブズの逸話やiPhoneの隠れ機能といったガジェット系のクイズなどが人気ですね。
三好(NDV):
クイズをたくさん出題した人や、いいクイズを出題した人が評価されるような仕組みは用意するのですか?
真田(ブロックスミス):
はい。その設計を今しているところです。例えば「この出題者をフォローする」という機能を作って、フォロワー数が見えるようにしたいと思っています。また、現在は同じ問題は出題されないようになっていますが、一度間違えた問題を再出題して、全問正解できるような仕組みがあってもいいですね。コンプリートする人が増えれば出題者は新しいクイズを作成しようと感じてくれるはずですし、次はもっと難しいものを作ろうという気持ちにもなる。YouTubeではフォロワーが10万人になると銀の盾がもらえるのですが、そういったアイディアで承認欲求を満たすのもいいかと思っています。
三好(NDV):
QAQAは「UGC」と「承認欲求」がキーワードとなっていますね。
真田(ブロックスミス):
そうですね。QAQAの特徴の一つは、一般的なクイズと異なり、UGCであること。現在はどうしたらそれが成立するのかチャレンジしている最中ですが、承認欲求が強い方や、知的レベルが高い方は出題者になってくれそうということがわかってきました。
例えば昔から、ブログで自分の考えていることを言語化し「すごいね」「なるほど」なんて言ってもらい、承認欲求を満たす方は世の中に少なからず存在しますよね。鉄道に詳しい方だったら「ここのダイヤはここがこうなっていて、何番線まで何秒の余裕があるから実は乗り換えられるんだよ」といった、マニアックな知識を披露している方です。
それをブログではなくてクイズにしてもらい、クイズを楽しむユーザーを集め、コミュニティ化し、SNS要素を付加していく。QAQAはそういう構想を描いています。
十数年ぶりの開発現場復帰。真田氏が陣頭指揮を執る理由
── ブロックスミス社内での真田さんの役割を教えてください。
真田(ブロックスミス):
この1年ほど、僕は資金調達や外部との提携といった仕事に注力していました。そのためアプリの企画開発は若手に任せっきりだったんです。しかし今は役割を変更して、アプリ開発の現場に復帰しています。前職以前、元々僕はアプリ開発をしていたのですが、会社が上場してからは全くタッチしなくなってしまったので、もう10年以上ぶりの現場復帰になります。
── なぜ開発現場に復帰したのでしょうか。
真田(ブロックスミス):
QAQAのβ版をリリースしてわかったことは、このアプリのメインターゲットは10〜20代ではなくて30〜40代だということです。色んなSNSに広告を出したりして分析したのですが、圧倒的にランディングするのはInstagramやTikTokではなく、30〜40代が多いFacebookでした。最近は「Facebookの時代は終わって、今はTikTokが強い」なんて言われますよね。でもQAQAは、Facebookユーザーが最も反応を示す。同時に、サービスのポテンシャルは十分に高いということもわかりました。だったら若手ではなく、ユーザーに近い僕のようなオッサンがやったほうがいいんじゃないかと思ったというわけです(笑)。
── アプリ開発の責任者が若手から真田さんに代わることで、サービスにはどんな影響があるのでしょうか。
真田(ブロックスミス):
そもそも今のZ世代などの若い世代は、僕らの世代に比べると承認欲求が強いと感じています。また達成感に対する感覚も異なる。例えば、彼らが日常的に使っているSNSはInstagramやTikTokですよね。これらはひたすらスクロールして、ひたすら投稿を見る設計になっています。だから、承認欲求は満たせても達成感を感じられないんです。
シューティングゲームに例えてみましょう。シューティングゲームは通常、1面をクリアして達成感を得て、2面がスタートして、ランキングで上位に入賞して、達成感や承認欲求を得るという設計になっています。一方でInstagramやTikTokは、謂わば単に銃を撃ち続けているだけ。今の若い世代はそういった仕組みに慣れているので、若手が新しいゲームの企画をすると、ゲームとSNSの違いはあれど、後者のような設計になってしまうんですよね。
真田(ブロックスミス):
QAQAのマネタイズが、広告収入だけだったらそれでもいいかもしれません。しかしNFTの販売やアイテム販売でも収益化する以上、課金収入と広告収入のバランスを取らなくてはならない。そうすると、TikTok的な使用感だけではビジネスとして足りないんです。それで僕が現場に戻ってからは、達成感や承認欲求を満たせるような仕掛けを入れようと動いています。
三好(NDV):
メディアなのかゲームなのかということですよね。TikTokはゲームではなくメディアだからあれでいい。ゲームならクリアしたという達成感で自らの成長を感じたい。QAQAをゲーム性が高いサービスとするなら、達成感を高めることは必要な修正だと私も感じます。投資家としては、真田さんがもうちょっと早く前線に出てくれれば嬉しかったですが(笑)。
真田(ブロックスミス):
それはすみません、その通りです(笑)。オッサンが現場に出て企画に口出ししない方がいいかなと躊躇してしまいました。
三好(NDV):
例えばQAQAのクイズは現在2択じゃないですか。昔からクイズゲームに触れている身からすると、例えば4択がデフォルトで、たまにボーナスで2択になるといった形でもいいんじゃないかと思うのですが、そういった変更もありえますか?
真田(ブロックスミス):
これも、動画で2択というのはTikTokを念頭に置いてしまっているんですよね。TikTokライクが必ずしもいいわけではないので、それも撤廃することに僕が決定しました。4択でもいいし、動画じゃなくて静止画でもいい。今後はクイズのバリエーションを増やしたいと思っています。
「大きい × 大きい」の方がいい。両社の共創内容は
── NDVがブロックスミスに投資した理由を教えてください。
三好(NDV):
真田さんに頼まれたら投資せざるを得ませんよ(笑)。
三好(NDV):
冗談はさておき、そもそも真田さんとは、ブロックスミスで3回目の付き合いになるんです。一回目はiモードにも関係するサイバード。2回目は我々も投資したKLab。そして今回です。もう勝手知ったる仲なので、資金調達に動いていると聞いてすぐにミーティングを調整し、投資検討に移りました。
── クイズやエンターテイメント関連への出資は、NDVとしては珍しいですよね。
三好(NDV):
確かにこれまでNDVは、エンタメ、特にゲーム会社へ出資はほとんどしていなかったので、珍しい案件ではあります。とはいえ我々は、QAQAを単なるクイズゲームと捉えて投資したわけではありません。
真田(ブロックスミス):
投資を決めた段階ではまだQAQAは開発中でしたしね。
三好(NDV):
そうでしたね。むしろ純粋に「web3ゲーム一本で勝負します」と言っていたら、投資はしなかったかもしれません。
現在web3ゲームをプレイしているのは、ゲームで遊びたいというよりは、お金を増やしたい人だと認識しています。とすれば現状、web3ゲームのパイは決して大きいわけではありません。今後このパイを大きくしようと思ったら、企業側からの広告出稿や販促費をサービスに組み込まなければならない。そういった真田さんの発想は正しいだろうと判断して、投資に至りました。
真田(ブロックスミス):
三好さんがお話してくれたように、現状web3ゲームのパイは大きくありません。そもそもweb3の盛り上がりは2023年くらいまでに一旦終焉したと僕は思っています。
こういうことを言うとブロックチェーン業界に怒られるのですが(笑)、SECがビットコインの現物ETFを承認したように、Decentralizedの夢は終わったのではないでしょうか。今後は超中央集権的なものがドライバーとなり成長していくだろうと予想しています。ただ、現在市場に出ているサービスは、リアルアセットと紐づいたNFTやステーブルコインといった堅いものばかり。ただ、リアルの資産価値に基づいたステーブルかつエンタメ色のあるものは、絶対にこの先必要になってくるというのが僕らの仮説です。僕らはBtoCが得意だけれどもステーブルなところを狙いにいく。こういう独自路線を築こうと思っています。
── ブロックスミスとNDVの共創はどのような絵を描いているのでしょうか。
三好(NDV):
具体的な共創プランはこれから考えていきます。基本的には無理せず、ご一緒できるところがあれば今後やっていこうというスタンスですね。直近では、NTT Digitalが開発しているWaaS(Wallet as a service)をブロックスミスのサービスに組み込んだり、dポイントでの連携ができないか検討しています。クイズに正解したらdポイントがもらえる、といったものがわかりやすいですね。
真田(ブロックスミス):
そういった乗り入れはぜひやっていきたいですね。また今後ブロックチェーン技術が社会に浸透していく過程で、dポイントのようなポイントにもブロックチェーン技術が使われていくはずです。そういったところでも接点が出てくると見込んでいます。
三好(NDV):
スタートアップとの組み方は様々ありますが、基本的にはNTTドコモ、ひいてはNTTという大きな会社・サービスと、順調に成長して大きくなったスタートアップという、大きなもの同士の組み合わせが最適だと、個人的には考えています。NTTドコモを上手く使って成長してもらうだけでなく、ある程度育った段階で、別の大きなビジネスを仕掛けたいですね。
ブロックスミスの次の展開はweb3 × AI?
三好(NDV):
次のプロダクトも検討していると思いますが、web3系のサービスを考えているのですか?
真田(ブロックスミス):
そもそもブロックスミスはweb3の会社だと言っていたのですが、最近はAIにも興味が出てきました。それで2023年には「BLOCKSMITH AI Lab」を設立し、AIの研究を進めています。現在は定期的にどんなサービスに可能性があるか、社内でディスカッションしているところですが、web3を念頭に置くと発想が限定されるので、一旦そこに縛られずにAIの可能性を模索しているところです。次のサービスとしてはAIとweb3の両方の要素を取り入れたサービスがいいかなと思っていますが、AI単独でもいいですね。とはいえ、web3技術と組み合わせられれば僕らなりの優位性が築けるとは感じています。
三好(NDV):
なるほど。先述した通り真田さんとは長い付き合いです。web3でもAIでも必ず成功を収めてくれると信じています。今後も引き続きよろしくお願いします。
真田(ブロックスミス):
こちらこそ、よろしくお願いします。
(執筆:pilot boat 納富 隼平、撮影:ソネカワアキコ)